Oyajisculler's blog

(おやじスカラー戸田便り)

ストレッチャー位置とは何か:

ストレッチャー位置には大きく分けて2つの要素がある。即ち、①ストレッチャーのクラッチ軸からの距離(靴の踵からクラッチ軸までの艇の長手方向の水平距離)と②ストレッチャーのシートからの踵までの高さ。各々の意味するところと調整の要点は以下の通り。

  1. ストレッチャーの位置①:これは右上の図に示したヒールディスタンスd(日ボのテキストにはピントゥヒールと書かれている)である。このd値が大きい(ストレッチャーが船尾寄り)とキャッチ角が大きくなり、フィニッシュ角が小さくなる。逆にd値が小さくなるとキャッチ角が小さくなり、フィニッシュ角が大きくなる。一般的にキャッチ角は45度、フィニッシュ角は35度(シニアは30度程度)というのが一つの目安といえよう。このストレッチャー位置はどうやって決めるのだろうか?これはフィニッシュで適切なフィニッシュ角を確保できる位置に設定するのが正しい。即ち、フィニッシュの姿勢を取ったときに、クルーとして求めるフィニッシュっ角を確保できる様に漕手それぞれの体格に応じてストレッチャーの位置を設定するのである。身長の高い漕手はd値が大きくなり、身長の低い漕手はd値が小さくなる。ボートに乗ってストレッチャーの位置を設定するのが正しいやり方であるが、水上でストレッチャー位置を変えようとすると、かなり時間がかかるので、予め、自分の適正なd値を知っておいて、出艇前に陸上でストレッチャー位置を調整すると簡単且つ短時間で出来る。(フィリッピ艇のストレッチャーは構造的な問題があり、水上で位置変更することは実質不可能に近い)
  2. ヒールディスタンスd値の標準値:自分なりの適正なd値を数値で把握していない漕手が殆どである。水上でストレッチャー位置調整に長時間かけるのを避けるために、次の標準値を推奨する。即ち上図にも記載したが、d=3530cm+(身長-180cm)/2を標準とすることを推奨したい。6月3日のログでは、ある程度お腹の出た中年漕手を念頭に置いてd=28cm+(身長-178cm)/2としていたが、漕手として適正な体格であれば、これより1cm程度d値を大きめにした方が漕ぎやすいことを最近体感した。(おやじは最近お腹周りがすっきりしつつあり、フィニッシュレンジが伸びた)また、180cmの身長でd=3530cmというのは覚えやすいとも思う。例えば、身長174cmのおやじ本人の場合、d=3227cmが適正値であり、実際このd値でおやじ本人は気持ち良く漕いでいる。尚、上記はスイープオールの場合であり、スカルの場合は2cm程度手前にした方が良さそうだ。(参考ながら、ワークハイトを高くすると、フィニッシュレンジが伸びて適正なd値が少し大きめとなる模様)
  3. ヒールディスタンスに関する良くある間違い:上記のヒールディスタンスの標準値を知らずに、素人漕手がやる良くある間違いは次の通り。即ち、フィニッシュではなく、キャッチ角を合わせようとして身長の低い漕手が大きな漕手と同じストレッチャー位置dに設定してしまうという間違い。これれでは、フィニッシュを確り押し切ることが出来ず、酷い場合はフィニッシュでハンドルが腹に支えることになる。小さい漕手はd値を小さめにして、キャッチは良く前に伸びてキャッチ角が合う様に頑張るのが正しい。
  4. ストレッチャー高さ②(ヒールデプス):踵からシートまでの高さをヒールデプスという。これは概ね、15cmから17cm程度が適正と思うが、ヒールデプスを毎回調整するのも手間がかかるので、不特定多数の漕手が艇を共用する社会人クラブの場合は、16cm辺りで固定しておくのが妥当かと考える。尚、ヒールデプスが大きい方が、体の硬い漕手はキャッチの姿勢が取りやすいので、中年漕手は少し低めくらいが適当と考える。また、ストレッチャーを低めにすると重心が下がるのでボートの安定性も良くなる。但し、ストレッチャーをあまり下げすぎると静止スタートなどで思い切り蹴ったときに尻が浮いてシートを外したり、脹脛がフィニッシュ時にデッキやレールに当たって漕ぎ難いことがあるので要注意。