10月に行われた戸田監督会で、荒川での乗艇に安全性について議論がなされた。おやじも荒川の事情を良く知る者としてこの会こ招かれ、荒川での乗艇事情ついて意見交換した。
次回は、12月11日(土)に開催されるが、その際に荒川出艇に関して要領などを説明する事になっている。この会議に提出する資料を纏めたので、ここで紹介したい。
1. 荒川練習水域の概要:
戸田橋〜秋が瀬橋間の片道約9kmを乗艇練習水域とする。(別紙−1=下記資料 参照)
荒川乗艇練習航路及び航行ルール.xls
安全管理範囲を定める上で、荒川での普段の乗艇練習は、この水域で行うこととする。
2. 荒川への出艇準備・装備:
荒川は、戸田橋上の岸蹴り場以外で、安全に離着岸出来る場所があまり無い。従い、主に安全上の観点から、以下の点に留意して出艇準備或いは装備を行う必要がある。
1) 体調管理:
スポーツを行う者の基本であるが、体調万全であること。もし、体調に不安がある場合は、荒川出艇を控えること。
2) 艇の整備:
荒川で乗艇中に艇が故障した場合、簡単に艇庫に戻って修理する様な事は出来ない。従い、出艇前に艇を十分に点検し、乗艇中に故障が発生せぬ様に万全を期す。
3) 安全装備:
荒川での乗艇は自然環境の中で行われるものであり、万一の際に対応できるように、安全確保のために以下の様な装備を携帯する。
- 排水用スポンジ(モーター曳き波や、白波の浸水、雨水などの排水用)
- 工具(乗艇中のボルト・ナットの締め付けや、簡単な修理用)
- 携帯電話(万一の際の、連絡用。 防水袋に入れて携帯する)
- 尿瓶(乗艇中に安全に放尿する為の装備。 1リッターの上パックなど)
- 救命浮輪(所謂、救命具。特に低水温の冬場に必要)
4) 出艇計画の届出:
出艇計画を所属クラブに届け出る事で、万一、帰着が送れば場合に異常があった事をクラブ管理者に知らしめる事が出来る。最低でも、出艇ボードに出艇の行き先と、出発・帰着時刻を記入し、掲示する必要がある。
5) 緊急時連絡先:
出艇時には、乗艇中に異常があった場合の緊急時連絡先(通常は所属クラブの艇庫乃至管理者)を、乗艇時に携帯する電話に電話番号を登録しておくこと。
3. 艇の陸送
荒川に出艇するには、荒川の土手を越えて、荒川の岸蹴り場まで艇・オールを陸送する必要がある。チームボートについては、特段の難しさは無いが、1X艇の陸送については、慣れていないと難しい。1X艇の陸送要領は下記URLのサイトに一例が掲示されている。
http://partezrowing.com/ARA/2007hoa/Arakawa1x.pdf
尚、荒川の土手の頂点は高度が高く、風速が増幅されるので危ない。特に南風や北風の強風時には、突風で艇体が吹き飛ばされる場合があるので、注意する必要がある。
5. 荒川の潮汐及び水温事前チェック
1) 荒川の潮汐:
荒川のリアルタイムの水深(笹目)は以下のサイトで見ることが出来る。
http://www.river.go.jp/nrpc0305gDisp.do?mode=&officeCode=21281&obsrvtnPointCode=16&timeAxis=60
上の写真の様に川底が露出するのは、笹目の水深で50cmを切った時。川底が露出する状態になると、トレーラーを使ったモーターボートの上げ下ろしが困難になるので、モーターボートの上げ下ろしをする際には笹目水深で1m以上は必要。
モーターボートの上げ下ろし時刻を見極める際には、下記URLの東京芝浦港の潮位をチェックし、水深が1m以上確保できる時刻に行うと良い。尚、戸田橋付近の潮時は概ね芝浦港から2時間遅れ、また、笹目の水深は概ね芝浦港と同じと考えれば良い。
http://www2q.biglobe.ne.jp/~ooue_h-h/i/tide/s_tide.cgi?6&sibaura&0&0&13
参考までに、2011年5月4日(川浚い予定日)の芝浦港の潮時は以下の通り。この日の芝浦港の干潮時刻及び水位より、荒川戸田橋付近の干潮時刻及び水位を以下の通り予測する事が出来る。
- 場所 干潮時刻 水位 備考
- 芝浦港 11:32 2cm
- ↓ +2h ≒
- 荒川戸田橋 13時半 2cm (川浚いは13時〜14時が最適)
2) 荒川の水温:
荒川の水温は下記サイト(荒川:南畑の水温=秋が瀬上流)で確認する事が出来る。
http://www1.river.go.jp/cgi-bin/SrchWquaData.exe?ID=1363130446160&KIND=5&PAGE=0
冬季に、乗艇中に落水した場合、低体温症で命の危険に曝される事になる。一般的には水温(℃)数値を3倍した数値が、人間がその水温の中で耐えられる時間の目安。(日ボ安全委員会)チームボートの場合は、落水しても同僚クルーが迅速に救助できる可能性が高いが、1X艇の場合は自力での再乗艇、乃至は艇に掴まりながら、最寄りの岸まで辿りつく必要がある。これに最悪30分掛かるとした場合、水温は10℃以下だとこの間に意識を失う危険性がある。この事から、1X艇についてはモーターボートの伴走が無い場合は、水温10℃以下の低水温時は荒川出艇を禁じる必要がある。
6. 荒川練習水域の航行ルール:
1)右側通航:
河川に於ける船舶の航行は右側通航。
2)橋の下の水路:
荒川の乗艇水域に於いて、秋が瀬鉄橋・幸魂大橋・笹目橋については、橋脚が川の中に立っており、橋の下の水路が狭くなっている。これらの橋を通過する際には、以下に示す通り、橋脚で分けられた水路において広い方を航路とし、その航路の中で右側航行するものとする。
- 橋名 橋脚位置 ボートの航路
- 秋が瀬鉄橋 左岸寄り 橋脚の右岸側(東京サイド)
- 幸魂大橋 右岸寄り 橋脚の左岸側(埼玉サイド)
- 笹目橋 右岸寄り 橋脚の左岸側(埼玉サイド)
- 戸田橋 両側にあり 2本の橋脚の間(センター)
7. 国交省の定めた荒川通航規則
荒川に於ける船舶の通航方法:下記サイトに掲示されている。
http://www.ktr.mlit.go.jp/arage/goto/navi/pdf/doc_koji.pdf
上記規則の区域図:下記サイトに掲示されている。
http://www.ktr.mlit.go.jp/arage/goto/navi/pdf/doc_koji_kuikizu.pdf
荒川の通航規則の要点:
8. タンカー
大曲手前の右岸には、ジャパンエナジー朝霞油槽所のタンカーターミナルがある。ここには日曜日を除く毎朝、東京湾から上ってきた石油タンカーが着桟し、石油の荷揚げ作業を行っている。タンカーは毎朝6時過ぎに戸田橋を通過し、7時頃にはターミナルで荷役作業を開始する。タンカーは4隻程度の船団で航行している。荷役作業を終え、ターミナルを出発するのが9時半頃。概ね10時以降はタンカーの往来は無い。
タンカーは吃水が深いため、水深の浅い水域は通航できない。このため、タンカーは必ずしも右側航行はせず、水深の深い水域(カーブではアウトカーブ側)を通航する。タンカーとすれ違う際には以下の点に留意して退避すること。
- 水路の狭い水域(笹目橋付近)でタンカーとすれ違うことを避ける。
- カーブでタンカーとすれ違う際には、インカーブ側の水深の浅い方へ避ける。(中大裏手のカーブでは、右岸側(東京側)に避ける)
- タンカーの曳き波を受ける際には、艇体を波と平行にして浸水や艇へのダメージを避ける。
9. ウェイクボード
ウェイクボードの曳航用モーターボートは、ウェイクボードの曳航サービスを行う業者である。戸田橋より上流をゲレンデ(遊び場)とするモーターボートは赤羽鉄橋下流の舟戸公園付近に拠点を構えている以下の2業者:
1) SOUND:
http://www.wakebarsound.com/sound.html
2) Garden - MWB:
http://www.mwb-ts.com/
彼らの活動水域は、概ね戸田橋から笹目橋の間を主体としていが、最近は笹目橋を越えて秋が瀬付近まで上ってきて活動していることもある。
彼らも客商売であり、営業中にトラブルを起こす事は避けたい模様。しかし、彼らが曳き波を立て、ローイングボートに迷惑を掛けている事に対し、立腹して敵意剥き出しにしてクレームすると、彼らは営業妨害を受けたと感じて「逆切れ」する可能性もある。従い、クレームがある場合は、敵意を剥き出しにせず、大人の対応をする事が肝要。
毎年実施しているHead of the ARAのレース時間帯には、戸田橋より上流に立ち入りを自粛する様、「お願い」を申し入れているが、毎回約束を守り、レースコース内への立ち入りは自粛してくれている。
何れにせよ、彼らが荒川で活動する事に対し、クレームしても改善は望めないので、先ずは、荒川に出艇する艇数を増やし、実績作りをすることが必要。荒川の戸田橋より上流がローイングボートで埋め尽くされば、ウェイクも身動きが取れないので、自ずとここから出てゆくものと思われる。
10. 釣り人
荒川では、我々が自由にボートを漕ぐ事ができるのと同様に、釣りも自由に行うことが出来る。戸田コースについては釣りが禁止されているので、我々は釣り人に対し、厳しく対応できるが、荒川ではこれは通用しない。釣り人は、荒川を利用する我々と同じ川好きの仲間と認識する必要がある。(流石に、岸蹴り場で我々が出艇・着岸をする際に釣り糸を垂れられると困るが。。。)
従い、彼らが釣り糸を垂れているところでは、極力釣り糸に触れぬように糸を避けて通る様にする必要がある。もし、糸が見えずに釣り糸をオールや船体に引っ掛けてしまった場合には、釣り道具を痛めないように丁寧に糸を外す様にする。万一、こちらの過失で釣り糸を引っ掛け、糸を切ったり釣り竿などの道具を壊してしまったりした場合には、損害を賠償する必要がある。ボートチームや個人がスポーツ保険や障害保険に入っていれば、上記のようなスポーツ中の事故で賠償責任が発生した場合には、保険適用の対象となる。
釣り人が釣り糸を垂れる場所は、概ね決まったところ(*)なので、そういうところを通る際には、岸から離れ、糸が絡まないところを漕ぐようにする。
(*)釣り人が常時いる場所:
11. 留意すべきハザード情報
主なハザードは以下の通り(別紙―1の水路図も参照):
- 岸蹴り場から中大艇庫裏手までの間は水路が狭く、且つ両側が垂直護岸なので、動力船が通ると、曳き波がなかなか消えない。
- 岸蹴り場から上流に向う際、中大艇庫裏手で大きく川が蛇行しているので、川の水路に沿って針路を変更しないと逆コースに入りやすい。
- 笹目水門辺りは水門入り口など岸の形状が複雑なので、要注意。
- 笹目橋手前から笹目橋に至る間は川が大きく曲がっているので、針路方向を確認し、注意しながら上ること。
- 笹目橋から漁協係船所上流カーブまでは川が複雑に蛇行しており、舵手無し艇の通航時は細心の注意を要する。真っ直ぐ進めることより、安全を優先し、逆コースに入らぬようにする必要あり。
- 大曲から1kmほど上った左岸(埼玉側)に岸から大きく張り出た古い杭の塊が2箇所ほどあり。
- 秋が瀬鉄橋から500mほど下流に至る左岸(埼玉側)は、昔の護岸の残骸が浅瀬の形で残っている。岸に近づくと干潮時に座礁する危険性あり。
- 秋が瀬鉄橋より上流に行く場合は、秋が瀬橋(道路橋)の手前で折り返すこと。秋が瀬橋の直ぐ先には昔の護岸や橋脚後が暗礁として残っている。秋が瀬橋は絶対に越えないこと。
- 下りの大曲でショートカットすると逆コースとなる。上りの艇から見ると見通しが利かないので危ない。下りクルーは大曲でショートカットしないこと。
- 漁船係留所から笹目橋に至る水路は、蛇行しているので、逆コースに入らぬように細心の注意を払って通航する。一方、右岸(東京側)には釣り人が多いので岸に寄り過ぎないようにすること。
- 笹目橋を通過する際には橋脚への衝突、及び、上りクルーとの衝突に注意する事。
12. 主な練習航路と距離
- 岸蹴り場〜秋が瀬鉄橋往復: 約17km
- 大曲〜秋が瀬鉄橋往復: 約 5km
- 岸蹴り場〜秋が瀬/大曲M字往復 約22km
- 岸蹴り場〜秋が瀬橋往復: 約18km
- 戸田橋〜大曲往復: 約12km
13. 川浚い
秋が瀬取水堰以下の荒川練習水域は、東京湾の潮の干満の影響を受けて水位が変動する。特に大潮の干潮時には、普段使っている岸蹴り場のブロック段より下の川底が顔を出す。台風などの増水時に大きな流木やゴミなどが流れてきたり、心無い者が自転車やバイクなどを岸蹴り場前に投げ捨てたりする事もあり、定期的に川浚い(川底の掃除)をしないと危険である。そこで淡青会が音頭を取り荒川で乗艇を行っているクラブに声を掛け、春の大干潮時(最も大きく潮が引く時期)に川浚いを行っている。(2006年より毎年実施)
<2011年の川浚い予定>
- 日時:平成23年5月4日(水:祝日)13時〜(1時間程度の作業)
- 作業内容:大きな石、流木、釣り針・糸やゴミ等を川底から拾い集めて撤去する
- 持参する道具:大きなスコップ、バケツ、軍手等、一輪車など
- 服装:汚れても良い格好+出来れば長靴
(こんな大木が揚がることも。。。)
(川浚いは結構楽しい。川浚いを終えると清々しい気分になる)
以上