Oyajisculler's blog

(おやじスカラー戸田便り)

用具に関する気付き事項2件:

1)ダブルスカルクルーでの整調とバウのオール(シャフト)組合せ:
ダブルスカルクルーでは、体格面で整調が大柄漕手、バウが小柄漕手という組合せが散見される。
この中で、W2Xで金メダルを獲得したポーランドクルーが使用しているCrokerオールは、大柄な整調がS4シャフト(ノーマル径)、小柄なバウがS39シャフト(小径で良く撓る)の組合せだった。(M2Xで銀メダルを獲得したリトアニアクルーも同様の組合せだった)

恐らく、同じシャフトを使うとドライブ中の二人のシャフトの撓りに差が出て、フィニッシュのタイミングがずれてシンクロし難くなる。これを改善するため、相対的に力の弱いバウには良く撓る小径シャフトのオールを使わせ、ドライブ中のシャフトの撓りと撓り戻りのタイミングをシンクロさせることが狙いと推察する。
この考えは、日本国内のエイトクルーにも適用できる。大学エイトクルーの場合、どうしてもクルー内の体格差・体重差のバラツキが大きくなる例が多い。この場合、大型漕手にはMedium-stiffmessのシャフト、小型・軽量漕手にはSoft-stiffnessのシャフトを使わせてドライブ中のシャフトの撓りをシンクロさせるという手法が有効と考える。
東大ではSkinnyのsoftとmediumの両方を所有している。7月のインカレ前期準備記の均等エイト2杯(過半数が軽量級選手)の並べで、softとmediumを漕ぎ比べた結果、Softの方が艇速が出た。ということで東大の軽量級選手にはsoftを使わせている。
ところでリオ五輪の独、英、蘭の代表エイトはSkinnyを使っているが、Skinnyにはstiffが無いので、恐らくmediumだと推察する。ということは東大での漕ぎ比べ結果の通り、軽量の日本人クルーならsoftが適正であろう。
現在、東大クルーでは、エルゴ2000m記録が6:45以下で、且つ、体重が75kg以上の漕手にはSkinnyのmedium sriffnessのオール、軽量漕手にはsoft-stiffnessのオールを使用させている。(現時点では、softオールの本数が不足する為、全員にsoftが行き渡らないので、漕艇的に漕力のある漕手にはmediumを使わせている)
8月末には新調したSkinny-softオールが8本到着予定なので、この時点で、現在mediumシャフトオールを使っている漕手にsoftオールを使わせ、全員softにした時のパフォーマンスの変化を確認し、ベストな組み合わせでインカレに臨む予定。

2)スカル艇のリガーはBack wing riggerか、Front wing riggerか?
今年、東大ではFilippiのBack wing rigger付きの1X艇:魁を購入。6月から対校スカラー:M垣に使わせているが、非常に性能が良く、艇速が改善した。但し、1点、難点があるのが、Oarlockを取り付ける弓型のPin Holderのリギングの難しさ。

1X艇なら、当人が注意深く使用し、少々時間が掛っても忍耐強くリギング作業できるだろう。しかし、2X艇や4X艇ともなると、この弓型形式のBow wing riggerのリギング作業は、かなり面倒。ハッキリ言って自分の教え子のクルーであっても、リギング調整が難しいのでチームボートのクルーにBow wing riggerは使わせたくない。そもそも4X艇で腹切りしたら、Bow wing riggerがぶっ壊れてしまうリスクがある。(1X艇なら腹切りすると艇が直ぐ止まるのでリガーやオールに掛る破壊力小さい)
ということで、コーチとしてはリギング作業の面倒さや腹切り時の損傷を避ける意味で、4X艇や2X艇のリガーはBack wingでなく、Front wingの方が好ましいと考えている。
この意味で、今回のリオ五輪でメダルを獲得した4X艇や2X艇のリガー形式を注意して見てみた。
この結果、以下のクルーがBack wingではなく、Front wing riggerを採用していた。

  1. M4X:銅メダル獲得のエストニアクルー
  2. W4X:金メダル獲得のドイツクルー、銅メダル獲得のポーランドクルー
  3. M2X:Front wingは無し
  4. W2X:金メダル獲得のポーランドクルー、銅メダル獲得のリトアニアクルー


以上の通り、M4X,W4X,M2X,W2Xのメダリスト12クルーの内、約半数のクルーがFront wingだった。