Oyajisculler's blog

(おやじスカラー戸田便り)

Ergo記録から乗艇タイムの換算

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Ergoの2000m記録から、実際の乗艇2000mタイムへの換算に関して、私がいつもやっている要領を以下の通り紹介する。

各種換算に関する技術情報:

この方法は私が東京大学漕艇部のコーチをしていた時に使っていたもの。
2011年に日本ボート協会強化委員会の強化委員として活動していた時にも、代表選手選考の手法として用い、日本ボート協会のホームページに掲載し公開した。
内容詳細をこのブログで書くとボリュームが大きすぎるので、詳細に関しては関連サイト(URL参照)を参照願いたい。

1.エルゴタイムの体重換算について(2011-10-21付け日ボ強化委員会)
    内訳:http://www.jara.or.jp/info/2011/CrewJAPAN24_1028_4.pdf

2.艇種毎のBoat Time係数について(2011-10-18付け日ボ強化委員会)
内訳:http://www.jara.or.jp/info/2011/CrewJAPAN24_1028_5.pdf

3.距離とタイムの関係(2011-10-19付け日ボ強化委員会)
内訳:http://www.jara.or.jp/info/2011/CrewJAPAN24_1028_6.pdf

4.水温と艇速(タイム)の関係(2012-11-14付け「おやじスカラー戸田便り」)
内訳:http://d.hatena.ne.jp/oyajisculler/20121114

Ergo2000m記録の75kg換算値は、舵手付きフォアのタイムと仮定:

日本人男子選手の出すErgo 2000m記録は、男子舵手付きフォアのタイムと良く合致する。
これをベースに、Ergo2000m記録の75kg換算値は、舵手付きフォアの2000mタイムに合致すると仮定する。

例えば、私の2018年度全国MR大会時の記録:6'57"2、体重:81.5kgを75kg換算するしてみる:

  • 75kg換算値=6'57"2 * *1^(-2/9) = 7'03"3

この75kg換算値:7'03"3は、私と同じ力を持った漕手4名で編成した舵手付きフォアクルーの2000mタイムと見做す。但し、前提条件は以下の通り

  1. 水温は夏場の(概ね27℃)、
  2. 無風静水のベストコンディション、
  3. Ergoと同じ出力を乗艇で出す(出力効率100%)
  4. 一流クルーの漕技並みの漕ぎをする。

付きフォアのタイムをシングルスカルに換算(η100%):

前述の艇種毎のBoat Time係数は、舵手付きフォアを1.0とした場合、シングルスカルは1.10729となる。
シングルスカル以外のBoat Time係数は、前述の資料参照)
私がErgoで6'57"2を出した出力をシングルスカルで100%発揮し、一流スカラーの漕ぎをした場合に出し得る2000mのタイムは:
1X(η100%) = 7'03"3 * 1.10729 = 7'48"7 (但し夏場、無風・静水)

実際にシングルスカルで出し得るタイム:

Ergoで6'57"2を出す際には、出力すること以外の余計な力は完全に脱力し、応援の力によってラストQを完全に出力を出し切っている。
舵手付きフォアやエイトなど、艇が安定して、漕ぐ事のみに100%集中できる舵手付きの大艇艇種であればErgo並みに出力できると考える。
しかし、シングルスカルでは、バランス不安定で、艇をまっすぐ進めたり、残り距離の把握など、漕ぐ事以外にやらなければならない副次的な要素が多い。
従って、シングルスカルでErgoで出し得る主力を100%出し切るのは、困難と考える。
私の場合は、本番MR大会での100%記録より10秒程度遅いタイムは、悶絶せずに安定して出すことができる。
これは出力効率に換算すると93%程度。
この93%程度の出力であれば、シングルスカル乗艇でも発揮しうることは可能と考える。もう少し頑張れば95%程度まで行けると思うが、それ以上は厳しいだろう。

ということで、シングルスカル乗艇での私の目標タイム(夏場水温、無風・静水)は以下の通りとなる。

  • 必達目標(η93%) = 7'48"7 * (93%)^(-1/3) = 8'00"1
  • 挑戦目標(η95%) = 7'48"7 * (95%)^(-1/3) = 7'56"8

因みに全日本社会人選手権の50歳台シングルスカルで対戦することとなるT内選手(Ergo:6'54"4, 体重69.2kg)のシングルスカル予想タイムは、上記の要領に基づいて試算すると:η93%ベースで、7'43"7となる。
流石に10秒以上差があるので、シングルスカルのレースでは彼には及ばないだろう。まあ、彼は私より7歳若いこともあるし。。。

Ergo記録から求めた換算タイムと乗艇実タイムとの比較:

近畿MR大会では、Ergoの記録と併せて計測した体重も掲載している。この結果から前述の要領に基づいて75kg換算タイムを求める事が出来る。
昨年度の全日本選手権などの大きな大会にシングルスカル種目に出場し、好タイムを出したスカラーの出力効率を試算してみた。
但し、水温は夏場並みの水温と仮定して計算する。

  • T田D選手:Ergo:6'32"3, W:74.9kg, 1X(η95%)換算:7'21"8、全日本M1X-SF実タイム:7'23"71、出力効率:93.8%
  • T田K選手:Ergo:6'34"8, W:72.9kg, 1X(η95%)換算:7'22"5、全日本M1X-Heat実タイム:7'22"79、出力効率:94.8%
  • F本選手:Ergo:7'33"6, W:59.4kg, 1X(η95%)換算:8'11"4、軽量級LW1X-FA実タイム:8'11"16、出力効率:95.1%
  • O石選手:Ergo:7'15"8, W:61.1kg, 1X(η95%)換算:7'54"3、軽量級LW1X-FA実タイム:7'56"74、出力効率:93.5%

参考までに世界トップのスカラーに関しても同じ要領で出力効率を試算してみた。

  • K.Borch(Norway):Ergo:5'48", W:84kg, 1X(η95%)換算:6'39"8、2018 WRC M1X FA実タイム:6'38"31、出力効率:96.1%
  • J.Gmelin(Swiss):Ergo:6'53"1, W:70kg, 1X(η95%)換算:7'39"9、2018 WRC W1X SF実タイム:7'23"93、出力効率:105.6%

Borch選手のη96%は、さすがに素晴らしい。世界トップのスカラーはこの程度の出力効率を出しているということだろう。今回の私の試算と良く合致している。
一方で、女子スカラーのGmekin選手だが、効率105.6%とは驚き。もしかしたら、Ergoは本気で取り組んだ記録ではないのかも知れない。

以上

*1:75kg+22kg)/(81.5kg+22kg