数日前にhead of the ARAの写真集が公式HPに掲載された。
http://sv82.wadax.ne.jp/~partezrowing-com/ARA/modules/news/article.php?storyid=57
自分の写真をダウンロードするついでに日本代表候補の主な選手の写真もダウンロードして、私の写真アルバムに転載してみた。
http://f.hatena.ne.jp/oyajisculler/Head%20of%20the%20ARA/
最初は自分の漕ぎを見ることを目的としていたが、トップ選手の漕ぎと見比べてみた。
結果、58歳という高齢故、キャッチでの柔軟性の問題からキャッチレンジに差があるものの、基本的なテクニックに関してはトップ選手と然程差が無い様に思われた。
ということは、日頃、私自身が取り組んでいる漕ぎのテクニックに関して、概ね、トップ選手の取り組みと概ね同じ事を出来ている理解出来た。
そこで、スカリングテクニックに関して、HoAに参加した主な選手達に関して注意深く観察し、考察してみたい。
静止画を見ての考察なので、漕ぎの流れであるリズムやレートに関しては評価できないので、主に漕ぎの中でのキャッチ、フィニッシュでの姿勢やブレードワーク・ハンドルワーク、そして体の動きやハンドルクロスオーバーのあり方などパーツに分けて評価する。
今回は、スカラーの漕ぎに関して考察を試みたい。
スカリングのローイングサイクル:
ローイングはエンドレスサイクルであり、始点・終点は明確に定義出来ない。
一方、近年の乗艇での漕ぎ出しの技術練習では、腕漕ぎ→上体漕ぎ→フィニッシュ1/4→。。。。→フルレンジという方法が一般的になっている。また、近年、低レートUT漕でFinishリリース後に動きを一時停止(Pause)するPause at the Finish(P@F)を多用してパフォーマンスを向上しているチームが多くなっている。
ということで、ここではローイングサイクルを以下の様な順番で考察する。
ローイングサイクル:
Finish:
前述の通り、Finishは押し切り、ブレードリリースそしてフェザーターンまでを一連の動きで構成される。
漕手の漕ぎのレベル・熟練度は、そのFinish周りの動きを見れば概ね判断できる。
スカラーではないが、豪州スイープ漕手のDrew Ginnは五輪に4回出場し、金メダル3個、銀メダル1個を獲得した世界の超一流漕手だが、彼の漕ぎで最も卓越したテクニックの胆は、このFinishにあると考えている。
即ち、効率よい漕ぎを実現するには、Finish押し切りとブレードリリース(フェザーターンまで含む)を分けて取り組む必要があると考える。(当然、ブレードリリース=ハンドルタップダウン時には腕・上体をリラックスさせる)
未熟な漕手、或いは体幹や腕周りが貧弱な漕手は、押し切りとブレードリリースを分離せず同時に行ってしまい、Drive後半でブレードが浅くなりwash out(ブレードが大きくスリップする)させてしまい、ドライブの有効レンジが短くなる。
それでは写真を見てみよう:
<荒川選手>
Finish押し切り。グリップエンドと胸の隙間は約10cm。ブレード=スクウェア。指の第3関節はほぼ直角で基節骨(第2関節と第3関節の間の骨)は垂直でブレード面と並行になっている。この後、残りの約10cmのレンジでハンドルを斜め下(約45度下方)にタップダウン&フェザーターンする。
タップダウン&フェザーターンの途中。
ブレードリリース(タップダウン)&フェザーターン完了。フェザーターンは指の第3関節を伸ばし、基節骨を水平とすることでブレードをフェザーする。(指の第1、第2関節は解かず、はハンドルをグリップしたままホールドする)手首は極力動かさずにフェザーするこのテクニックをフィンガーターンという。荒川選手のフィンガーターンのテクニックは卓越している。
同上。ブレードをリリース完了すると腕は良く脱力している。
<手首とフィンガーターンの折中によるフェザーターンの例>
Finish押し切り。グリップエンドと胸の隙間は約15cm。ブレード=スクウェア。指の第3関節はほぼ約45度で基節骨(第2関節と第3関節の間の骨)は45度程度。残りのレンジでハンドルをタップダウン&フェザーターンする。
タップダウンの途中。
同上。背後からの写真。上体の後傾角度は浅い。(座高を高く保っている点はGood)
ブレードリリース(タップダウン)&フェザーターン完了。グリップエンドと胸の間に5cm?程度隙間がある。指の第3関節は少し伸ばしているが、ドライブ中の基節骨の角度が45度程度だったので、フェザーターンするには手首も動かす必要があり、手首が少し下がっている。即ち、半分フィンガーターンしているイメージ。手首を使ってフェザーする事が原因かもしれないが、フィニッシュレンジを少しロスしている様に見える。
<手首だけでフェザーする場合>
フィンガーターンでフェザーするテクニックを習得していないと、手首だけでフェザーする必要があり、ブレードリリース後に手首・腕を良くリラックスさせる事が出来ずフォワードでリラックスする事が難しくなる。
フィンガーターンでフェザーするテクニックを習得していないスカラーの例
この選手も手首だけでフェザーするため、手首は下がってもハンドルを十分下げる事が出来ないのでブレードリリース後のブレードと水面のクリアランスが十分取れていない。
<Wash outの事例>
押し切りとブレードリリースを分離できず、フィニッシュで押しながらリリースするとブレードがスリップして有効レンジをロスする。
特に女子選手の場合は体幹や腕が貧弱なため、体幹を高く保つ事が出来ず、必要以上に大きくバックスイングしてハンドルの軌道を下げながら押し切りとリリースを同時に行ってwash outする漕ぎがよく見られる。
この選手もフィニッシュでバックスイングを大きく取りすぎて体幹を落してしまい、ハンドル軌道が下がってwash outしている。
Forward(Recovery):
リカバリーはまず、リラックスすること。そしてブレードと水面のクリアランスを確り保って擦らないこと。
クリアランスキープの為には、フィンガーターンして手首を下げずにハンドルを下げるテクニックが必要。
更に、クロスオーバー時には左右のハンドルの高さを極力近づける様にする必要がある。フランス式の場合は左手を先に前に出し、右手を後から出すようにして位相差を付けてハンズアウェーすることで左右の高さの差を最小限にとどめる様にしている。
フォワード中は腕・上体をリラックスさせることが肝要。
<荒川選手>
フィンガーターンが確り出来ているのでリリース後は腕が良くリラックス出来ている。
ハンズアウェーしながらクロスオーバー。左手を先行させてブレードのクリアランスを確り取っている。左手の基節骨は水平で手の甲と1ラインとなっている。
フォワード中盤。肘は僅かに曲げてリラックスさせている。
フォワード終盤、肘は伸びている。ブレードはスクウェアリング途中。
フォワードエンド。脛は垂直、ブレードは完全にスクウェア、エントリー直前。少し背中が曲がり過ぎている様に見える。もう少し骨盤を前傾させることが出来れば、背中を丸めず立たせることが出来る様に思われる。
Catch:
良いキャッチをするには、適正なキャッチ姿勢+キャッチ角度(振り角)+エントリーとドライブの分離(入れてから押す)ことが肝要。
低レートのUT漕であれば、少々過大なキャッチ角でもブレードを入れて少しブレードが戻ってきてから強くレッグドライブすることも可能だが、レート30オーバーのレースペースではキャッチ角を大きく取りすぎると、キャッチで強く脚でドライブしようにも上手く力が繋がらないので、キャッチ姿勢とキャッチ角は最適な関係となる様に考慮すべきと考える。
スタート方向へ向けて回漕してゆく際は概ね低レートUT漕で漕いでいるので、大きなキャッチ角で漕いでいる漕手が多い。
一方、レース中は高めのレート、即ち、レースペースに近い漕ぎとなっているため、若干、キャッチ角は小さめとなっている模様。
<代表候補合宿に選考された選手のキャッチ>
荒川選手の力強いキャッチ
同上。ややオールが深いか?
同上。背後から。
エントリー直前の姿勢。腕・上体が前に良く伸びてキャッチから強くレッグドライブ出来る姿勢となっている。
エントリーの瞬間。戻さずエントリーしている。
ブレードエントリー時にV shape splashが上がり、確り水を掴まえている。
フォワードエンドの姿勢。理想的なキャッチ前の姿勢。
確り水を掴んでいる。
同上。(B-sideのスプラッシュは波?)
ブレードエントリーの瞬間。戻さずにエントリーしている。
前に良く伸びているが、無理な姿勢にはなっていない。
確りブレードを入れ、キャッチからレッグドライブを確りブレードに伝える姿勢となっている。
<姿勢或いはキャッチ角に難がある様に見える事例>
前に出過ぎて、両腕を大きく開きすぎている様に見える。これではキャッチから確りドライブするのは難しいか?
同上。
脛が前傾しすぎで、これではレッグドライブが効かない。原因はインボードが長すぎる為か? オールを短くしてインボードを短くし、強い姿勢で振り角を取れるリギングとすべきと思われる。