1/24(火)、東大野崎研究室(教育学部身体教育学コース)のエルゴ計測装置で計測したデータの一部を野崎教授より送付頂いたので、計測データと合せて佐藤選手のエルゴ漕ぎに関する考察を記す。
1.野崎教授の分析概要(S選手と東大選手の差異)
東大の学生とは顕著に異なっている3点:
- シートの移動距離、移動時間が長く、速度は(意外にも)遅い。東大の選手のシート速度が速いのは、ハンドルに脚の力を伝えられていないので空蹴りのようになり、シートだけが後方に速い速度で動いてしまっているのではないか。
- ストレッチャーへの力の水平成分が非常に大きい。力のベクトルが水平方向を向いている。
- ストレッチャーに力をかける位置が拇指球あたりで安定している。東大の選手はストロークの中盤から後半にかけて位置が踵側にずれていってしまう。
2.氏家の分析:
<S藤選手のエルゴの漕ぎ方の特徴>
- 自分自身の体を使って、エルゴで最大限出力できるような漕ぎ方に徹している。兎に角、スコアに悪影響するハンドルの無駄な上下方向の動きを徹底排除して、ドライブ中だけでなくフォワード中もひたすら水平(直線的に)にハンドルを動かしている。この結果、キャッチから強くハンドルをドライブする事ができている。これに対して東大選手は、フォワード中にハンドルを下げ、キャッチ直前に腕や手首をヒョコッ上げたり伸ばしたりする無駄な動きがある。また、この様なキャッチ直前の無駄な動きをすると腕や背中に緩みが出来て、キャッチからの強いレッグドライブを体幹や腕で支えきれずに力がハンドルにダイレクトに伝わらない。要するにキャッチのド ライブ力 が弱い。
- 体の中で最も大きな出力を出せる脚を最大限利用するため、フィニッシュまでレッグドライブを使い続けている。具体的には、ローイングの世界ではドライブ動作は脚ー腰ー腕のシリーズドライブが基本であるが、S藤選手はエルゴを漕ぐ際には、脚と腰を同時にドライブしている。即ち、キャッチの瞬間は脚だが、レッグドライブ1/4辺りからボディースイングも開始し、フィニッシュハーフではボディースイングとレッグドライブを同時に行い、ハンドルのドライブスピードの最大化を狙っている。最後まで脚を使ってドライブできるのは、体幹並びに腕(正確に言うと肩甲骨周りの背中の筋肉)の力が強いという事を示している。 尚、S藤選手はエイトやシ ングルスカルを漕ぐ際には、乗艇動画を見れば分かる通り、ドライブは基本動作の脚ー腰ー腕のシリーズドライブとしている。これは乗艇の場合、フィニッシュ押し切りではブレード離水の有効レンジロスが発生するため、最後の押切のところでレッグドライブを行うと折角の脚の力が空振りとなってしまう。これを防止し、脚の力を100%ブレードの推進力に伝えるために先に脚のドライブを使っている。一方、エルゴではブレード離水は無いので、最後の押切まで脚のドライブを有効に使っている。要するにエルゴスコアを良くするために、自分自身の頭で考えてより強く、よりスコアの出る漕ぎをしているということ。
- S藤選手の背中 から撮影した動画をみれば分かるが、S藤選手はフィニッシュの腕引きの際に、肩甲骨を寄せて肩を後方へ引く事で腕引きを行っている。肩甲骨周りの筋肉は腕の筋肉より大きく強靭なので、この方が力が出やすい。ボートのトップアスリートの背中を見れば分かるが、トップ選手は肩甲骨周りの筋肉が発達して大きく盛り上がっている。東大漕手も肩甲骨を寄せてフィニッシュで強くハンドルを引き付けよう。
S藤選手のエルゴ計測を撮影した動画:
https://youtu.be/Gq8oHxZfSng
2016年、日大インカレエイトの低レートUT(S藤選手は整調)
https://www.youtube.com/watch?v=ohqmX9FJ7Hk&sns=em
参考だが、私が2010年の全国マシンローイング大会(当時49歳)で6'46"を出した際、背中から撮影した動画をYoutubeにアップしてある。エルゴで良い記録を出す漕手はフィニッシュ時に肩甲骨を寄せて肩・肘を後ろによく引いている。
https://www.youtube.com/watch?v=4xrOb9k8lxc
因みに、私は50歳の時に、6'44.9を出し、全国マシンローイング大会の50歳代歴代最高記録を出している。
http://www.jara.or.jp/mr/record.html
今日のPMモーションは、エルゴ60分漕を実施。この際に、S藤選手のエルゴ漕ぎの良い点を真似るべく、各漕手の漕ぎに関して改善ポイントのアドバイスを行った。
良い漕ぎが出来れば、必ず良い記録を出す事ができる。
以上