Oyajisculler's blog

(おやじスカラー戸田便り)

LBRC中年エイトクルーのW.Upメニュー

oyajisculler2012-09-12

LBRC中年クルーは年間を通して、毎週末、荒川でエイト乗艇をしている。 H16年より活動を開始し、現在9年目に入った。その活動の中心である50歳代のVirtuクルーはS54年〜S57年の全日本エイト四連覇世代を中心メンバーとしたクルーで、全日本マスターズエイトでも現在四連覇中。
さて、ここでLBRCエイトのW.Upメニューを紹介したい。H16年の活動初期は、S50年代の大学生時代に行っていたW.Upメニューに準じて実施していた。しかし、週1回乗艇という頻度でしか乗艇していないため、また、毎週メンバーが入れ替わるため、なかなかバランスが安定せず苦労していた。
こんな中、2008年9月、欧州のローイングクラブで一般的に行われている両舷によるノーフェザーフィニッシュワークを試験的に導入してみた。はじめはバランスがバタバタで、惨憺たる状況だったが、欧州では中年からボートを始めた素人のオジチャン、オバチャンもやっているという事で、根気良く継続してみた。その結果、それまでなかなか安定しなかったフィニッシュの押し切りやリリースのタイミング、及びフォワードでのバランスコントロールが出来る様になってきた。 この練習により乗艇の質が1ランク上がることを実感した。
LBRC中年クルーは、毎週土曜日の午前に秋が瀬M字往復の22kmを漕いでいる。皆さん週末の家族サービスや、午後に仕事が入っていたりして、水上で費やせる時間は2時間程度に留めたい。(8時30分集合の場合、出艇前準備他30分+乗艇2時間+納艇後後片付け他30分で、11時30分解散のイメージ)
この様な条件の中、W.Upメニューは過不足無く、効率よく行う必要がある。この4年ほど継続し、概ね効果を挙げている我々のW.Upメニューをここで紹介する。

<LBRC中年エイトクルーの荒川出艇時のW.Upメニュー>
1. 上流に向けて岸蹴り。

2. フォアワークによる分漕:整調フォア→ミドルフォア→バウフォア→両端フォア(各10本程度)。ここでワークハイト等リギングに問題ないかどうかを大まかに確認する。

3. 両舷でのノーフェザーフィニッシュワーク:

  1. フィニッシュ姿勢でのチャボリ:ブレードの出し入れのみ。 全員の動きが合いバランスが取れるまで実施。
  2. 腕漕ぎ:上体はフィニッシュ姿勢(実際のフィニッシュ姿勢に準じて後傾)とし、腕漕ぎのキャッチ姿勢(ブレード一枚水中に入れた状態)からノーフェザーで腕漕ぎを行う。腕漕ぎという短いレンジの中でブレード一枚を確りと水を押す。フィニッシュでの押し切りを全員で合わせてバランスをキープする。押し切ったらハンドルをタップダウンし、クリーンにブレードを離水し、ハンズアウェーする。(ブレードスクェアで離水する様にハンドルをタップダウンする) キャッチはブレードが戻らぬ様に素早くエントリーする。1本1本確り押すことが重要であり、ユッタリしたリズムで行う。(シャカシャカしたリズムで行うと、キャッチやフィニッシュの動き・精度が劣化するので要留意)400〜500m位を掛けて、全員がキチンと合うまで行う。
  3. 上体漕ぎ:上記腕漕ぎにボディースイングを加える。1本1本確り押すことが重要であり、ユッタリしたリズムで行う。400〜500m位を掛けて、全員がキチンと会うまで行う。
  4. フィニッシュ1/4:上記上体漕ぎにシートスライド1/4を加える。シートスライドを加えることでストレッチャー(靴の踵)に体重が載り、腕漕ぎや上体漕ぎに比べるとバランスをコントロールしやすくなる。1本1本確り押すことが重要であり、ユッタリしたリズムで行う。400〜500m位を掛けて、全員がキチンと会うまで行う。
  5. フィニッシュ1/2:シートスライドをハーフまで伸ばす。ハーフスライドとなると艇速がかなり出る。キャッチが難しくなるので、キャッチが戻らぬように素早くエントリーする。1本1本確り押すことが重要であり、ユッタリしたリズムで行う。400〜500m位を掛けて、全員がキチンと会うまで行う。
  6. フィニッシュ3/4:シートスライドを3/4まで伸ばす。ユッタリしたリズムで行う。400〜500m位を掛けて、全員がキチンと会うまで行う。
  7. フルレンジ:シートスライドをフルスライドまで伸ばす。ユッタリしたリズムで行う。400〜500m位を掛けて、全員がキチンと会うまで行う。
  8. フェザーを付ける:フェザーを付けてもノーフェザーの時と同様に確り押し切り、タップダウンする。フォワードもノーフェザーと同じ軌道でブレードをリカバリーする。(ここまでのフィニッシュワーク全行程で2km程度を使って漕ぐ)

腕漕ぎの参考映像(英国LM2Xクルー)

4. 両舷でのノーフェザーキャッチワーク:

  1. キャッチ姿勢でのチャボリ:上体は前傾姿勢のまま動かさず、腕だけを使ってブレードの出し入れを行う。ブレードがフライアップするとバランスを崩すので、上げ過ぎない様にする。 全員の動きが合いバランスが取れるまで実施。
  2. レッグドライブ10cm:上体は使わず、レッグのみ10cmドライブし、水を掴む。(以下、各10本程度)
  3. レッグドライブ1/4:レッグドライブを1/4スライド使う。
  4. レッグドライブ1/2:同1/2スライド
  5. レッグドライブフルレンジ:同フルスライド
  6. レッグ&ボディースイング:上記にボディースイングを加える。(腕は伸ばしたまま)
  7. フルレンジ:上記に腕引きを加える。(ここまでの行程で500m程度漕ぐ)

キャッチワークの参考映像(英国LM2Xクルー)

5. ライトパドル500m程度:
前述のノーフェザーテクニカルドリル後に、フェザー付きにてSR18程度の低レートでライトパドルを500m程度漕ぎ、スムーズな艇の加速を確認する。

6. パドル10本 x 2セット:
ランニングスタートの加速3本(SR36前後?)の後、パドル短漕10本(SR30程度)を2セット行う。(静止スタート練習に向けたW.Up)

7. 静止スタート練習:
W.Upの最後に静止スタート練習を行う。 静止スタート練習を行う狙いは、W.Upのみならず、ATP-CP系無酸素パワー(出力持続時間7秒〜10秒程度)を使った最大出力発揮のトレーニングも兼ねる。 競技経験の乏しい漕手は、レースシーズンの短期間トレーニングだけではATP-CP系最大出力を十分に発揮する事が難しい。そこで、静止スタート練習をW.Upに取り入れて年間を通して繰り返しトレーニングし、最大出力発揮能力の養成を行う。
(注)静止スタートは、ボート競技のテクニックでも最も高度な技量を要求されるものであり、初級者が上手く実施するのは難しい。 未熟なクルーはミスオールしたり、バタバタバランスを崩したりする。しかしながら最大出力・最高速度発揮を目的としたトレーニングであり、ミスを承知で全力・全速力で漕ぐ必要がある。ミスを避けるために力を抜いたり動作(フォワード)の速度を落としたりするのは、トレーニングの主旨からして本末転倒である。(陸上の短距離走のスタートダッシュ練習は、常に全力で行うのと同じ事)

以下、具体的な実施要領。

  1. 静止スタート1本:スライドレンジは7割程度。
  2. スタート3本:3本のレンジは7割・6割・7割程度とし、水中はMAX。フォワードもMax.スピードとする。(静止スタート時のフォワードは推進力を発生できない無駄な時間であり、極力短縮したい)
  3. スタート5本:5本のレンジは7割・6割・7割・8割・9割程度とし、水中はMAX。フォワードもMax.スピードとする。
  4. スタート5本+ハイピッチ10本:上記のスタート5本に続いてハイピッチ10本でMax.スピードを出す。ハイピッチのレンジはフルレンジ、レートはMax.とする(SR40オーバー)ハイピッチでは素早い動作を行うために、水中をドライブするため以外の筋群は、極力脱力させ、軽快なリズムでスピーディー且つダイナミックに動作する。

以上が、定番のW.Upメニュー。このW.Upを終えた後に本番のトレーニングに入る。

以上