Oyajisculler's blog

(おやじスカラー戸田便り)

①リガーの種類:

ここではリガーの種類について述べる。基本的にSweepとScullのリガーは同じ形式と考える。以下、おやじが自分の目で見たリガーについて述べる。

  1. 3脚式:3脚式はリガーの基本形というべき形式であり、現在の国産規格艇に採用されている。構造としてはクラッチ軸を固定するリガー本体(船尾側のフロントステーとローイングスペース中央の大骨に固定するメインステーの2脚式)とクラッチ軸の頭を固定するバックステーの合計3脚でクラッチからの力をボートに伝えるもの。信頼性が高く、オリンピックや世界選手権で使われるボートに採用さていている標準的な形式である。戸田コースや荒川等の静穏な水域で漕ぐ場合は、強度・耐久性に優れた通常のダブルパイプ形式が良いが、ラフコンになったときに下側のパイプに波が当たって大きな波しぶきを生じて、水がボートに入りやすい欠点がある。ラフコンの中でのレースになることが多い牽牛両校のThe Boat Raceや隅田川で行われる早慶レガッタでは、ダブルパイプ式標準リガーを外して1本パイプのエアロウィングリガー(ガルウィング型)に付け替えている。
  2. 2脚式(弓形)=Sweep専用:最近では見かけなくなったが、おやじが大学生の頃は、Sweep艇のリガーと言えば2脚式だった。これはクラッチ軸が弓形の中に取り付けられており、この弓形にフロントステーとバックステーが溶接で固定されているもの。(中央のメインステーが無い)昔は、高価なアルミを使わずに鉄を使って出来るだけ軽いリガーを造りたいと言うことで考案された模様。当時の木造艇は横強度が弱いため、3脚リガーを付けるとメインステーから伝わる力に大骨が耐えられず、船体が変形する問題があった。2脚式はローイングスペース前後部のブリッジ(デルタ製木造艇に採用されていたもので、左右のガンネルに渡していた横強度部材)に取り付けてあったので、横方向の力をブリッジを介して反対側のガンネルに伝えて相殺してくれるので、横強度の弱い木造艇には最適なリガーであった。しかし、リギング調整の自由度が限られていること、長期間使い込むと弓形とステーの溶接基部が疲労破壊する弱点があった。(レース中にリガーが壊れないか心配したものである。)2脚式は国産木造艇と共に姿を消してしまった。
  3. バックステー無しのスカルリガー:構造は3脚式リガーと同じであるが、何故かバックステーが無い。昔は欧州製のスカルもこの方式が主流であったが、欧州艇はフロントステー、メインステー共にアルミのダブルパイプで剛性が高いのに対して、国産スカルは細い鉄製のパイプでフロントステーが1本パイプで2脚式であった。リギング調整してカバー角(ブレードピッチ)をバッチリ調整しても、実際漕いでいる時にはクラッチから伝わる力に負けてリガーが変形して漕ぎ難かったことを記憶している。最近のスカルリガーの標準は、前述の3脚となっている。因みにおやじの1X自艇(1993年のサイクス製)のリガーはこのダブルパイプ式の2脚リガーでバックステーが無い。ワークハイトを高めに設定しているので、バックステーが無いとちょっと心許ない。1000mレースの静止スタートでは、強い力がリガーに懸かるので、来シーズン前にバックステーを取り付けようと思っている。
  4. プッシュステーリガー(バックリガー):通常の3脚リガーのフロントステ-を艇尾側でなく艇首側、即ち、バック側に配置したもの。このリガーの特徴は、ローイング中に常にステ-が圧縮状態にあり、クラッチ軸が上下のバックステ-2本で支えられているのでリガー・クラッチ軸の捩れが発生せず、力が艇に効率良く伝わるという点にある。このリガーは昔から採用されているものである。例えば、日ボの今年10月のカレンダーに掲載されている東京オリンピック優勝の米国2+クルーのリガーを見て欲しい。正しくプッシュステーリガーである。最近、注目を浴びているカーボンステ-式のプッシュステーリガーもこのリガーの亜種と言って良いと思う。
  5. ウィングリガー:右上の写真がウィングリガー。今回述べるリガーの中では最も新しい形式のリガーと言えよう。おやじが初めてウィングリガーを見たのはT大HCになったばかりの1991年の秋だったろうか?WMとか言うボートメーカーの1X艇に搭載されていたアルミパイプ製の円弧状のウィングリガーだったと記憶している。スカル艇ウィングリガーのメリットは次の点にあると考える。a.左右一体の構造となっており、横方向の力をウィング構造の中で相殺できるので艇の横方向の剛性配慮が不要となる。b.ウィングが取り付けられているのはストレッチャーの直上であり、ストレッチャーに加わる力とリガーから伝わる力を、両者の取り付け部分の中で相殺でき、艇体には推進力だけが伝わるので艇への負担が小さい。(艇に優しいリガーと言える)c.通常リガーには必要なローイングスペース中央の大骨が不要となり、お尻の大きな漕手が大骨に当たる問題や、レール間隔を大きく出来るので、脹脛がレールに当たる問題が解決できる。d.右上の写真の様な一体成型ウィングリガーの場合、ローリングに対してダンピング効果が期待できる。実際、おやじがウィングリガー付き1X艇に乗った時に安定性の良さを感じることが出来た。e.正面から見たときの投影面積が小さいので空気抵抗が低減出来ると思われる。一方、デメリットは何だろうか?想像するに、ストレッチャー上の1箇所でリガーを固定していることもあり、3脚リガーに比べて剛性が劣る様に思われる。これについては、最近のウィングリガーはバックステーを採用することで対処している。スィープウィングリガーに関しては、片舷だけに装備されるため、横剛性が不要という訳には行かない。また、ウィングリガーを搭載するためにガンネルの高さを下げなければならない様であり、波が大きな水域では逆に浸水の可能性が高まるという考え方も出来る。何れにせよ、アテネオリンピックや世界選手権の優勝クルーがスィープウィングリガーを採用しているので、近いうちに国内でもスィープウィングリガーを見ることが出来るかもしれない。見かけたら、おやじに一方願う。
  6. スライディングリガー(参考まで):このリガーを始めて見たのは1981年のルツェルンレガッタである。当時ドイツのスカラーがこれに乗って優勝した。構造は次の通り。a.ストレッチャーとリガーが一体のユニットになっている。b.このユニットがガンネルの上に敷かれたレールの上を前後にスライドする。c.漕手は艇の中央に固定されたシートに座って漕ぐ。d.漕いだ力は足を伝って座っているシートに推力として伝えられる(シートは後方がせり上がっていて、お尻がシートを押して艇を進める)e.ローイング中に漕手の体重移動が殆ど無いので艇の抵抗の原因となるピッチングやサージング運動が発生せず、艇がスムーズに走り、抵抗が少ない。但し、このシステムは製造コストが非常に高くつくので、FISAがこの後、このシステムを使用禁止にした。現在は見ることが出来ない。