Oyajisculler's blog

(おやじスカラー戸田便り)

早慶レガッタ;荒れた水面での耐航性

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今年の早慶レガッタ対校エイトは、2艇ほぼ横並びでゴールする接戦だった。
今年はレース日当日は午後から強めの南風が吹き、折からの潮流と風が喧嘩するコンディションでスタート地点からレースの中盤過ぎまではかなり荒れた水面の中でのレースとなった。

こういったラフコンでのレースでは、艇の耐航性の差が勝負に大きく影響する。
ローイングのレース艇の場合、船型自体は耐候性に関しては、それほど大きな差は無いと思う。
従い、荒れた水面での耐航性を改善するには、端的に言って、波が艇内に入り込まない様に乾舷が大きくすること。
また、シート座面が水面に対して高めにして、クラッチを高くした方が良い。これにより、ドライブ中にオールと水面のなす角度(差し込み角度)が大きくでき、ミスオールするリスクを減らすことが出来る。
身近なところで言うと、ナックルフォア艇はシート座面の水面からの高さがシェル艇より高いので荒れた水面でも相対的に漕ぎやすい。

尚、乾舷は8シート全てに大きく取る必要がある。この意味で、艇の前後トリムやピッチングは極力小さくし、even keelであるべき。

上記を前提として、今回の早慶レガッタでの両校の使用した艇の状況を動画から観察してみた。
私は以下の様に評価する。

  1. 乾舷:早稲田艇(Empacher R84)の方が、慶応艇(Vespoli)より大きい。早稲田艇のオールは水切れが良く、ミスが少ないが、慶応艇はオールが深く&返しが低くミスオールが多い。
  2. トリム:早稲田艇は概ねeven keelだが、慶応艇は船尾トリムとなっており、整調ペアの乾舷が小さく、ラフコンでの整調ペアのミスオールが目立つ。
  3. ワークハイト:慶応艇はハイト設定が低めとなっており、オールが深く入りすぎて、シャフトに簾が掛かると同時に、荒れた水面で度々ミスオールしていた。尚、レース終盤の波が小さくフラットな水面では、慶応艇の漕ぎ憎さが解消され、慶応は終盤に良く追い上げた。

慶応は、早稲田と等同の耐航性を有する艇を使っていれば、序盤のミスオールの影響が減り、このレース勝てた様に思う。
慶応の第二エイトが使用していたエイト艇を対校レースに使用していれば面白かっただろう。

因みに、私が知る範囲で、日本国内で良く使用されているエイト艇でラフコンに強いエイト艇は以下の通り:

  • Filippi: F42型及びF9型。(両船型共に乾舷が大きく、船体中央部の幅が広くラフコン時耐航性が良い)
  • Empacher: 84型。(86型は乾舷が低くラフコンに弱い)

参考までに、今回の早慶レガッタ対校エイトレースの動画から切り取った写真を添付する。

 スタート前: 手前の早稲田艇は概ねeven keel。奥の慶応艇は船尾トリム(船尾が沈んで整調の乾舷が低い)
 200m通過:レース序盤のラフコンで慶応整調は度々波にオールを取られてミスオール。この時はウィングリガーにも波が当たって激しいスプラッシュが上がっている。
 慶応艇は乾舷が小さいのでオールが深く入りやすく、シャフトの中央付近までスダレが掛かるミスが度々あった。
 700m通過
 1450m通過
 レース後半は水面が相対的に穏やかになり、慶応艇が挽回。
 2850m通過:慶応は、このラフな水面で漕ぐにしてはハイト設定が低すぎたのではなかろうか?常にオールが深く入ってシャフトの半分辺りまで水につかっている。

以上