Oyajisculler's blog

(おやじスカラー戸田便り)

順流・逆流に対する錯覚

oyajisculler2008-06-30

普段、流れの無い静水コースや流れの緩い荒川などで漕いでいるクルーが、偶に流れのある水域で漕ぐと、良く可笑しな表現を使うのを耳にする。即ち:
「順流は水中が軽いけど、逆流は水中が重いんだよね」
これを聞くたびにおやじは、「へ?なんのこっちゃ?」となる。
ボートというモノは水に浮かんだボートに乗り、ブレードを介して水を押すことでボートを進めている。水中が重い、軽いというのは、同じ艇速(対水速度)を得るために発揮しなければならない出力が大きいか小さいかで、「重い」や「軽い」と表現すべきものである。
従って、ボートが浮いている水全体が流れる川で漕いでいる時には、(風が吹かなければ)順流で漕いでも、逆流で漕いでも同じ艇速(対水速度)を得るための出力は変わらない。変わるのは陸上の2点間(例えば、荒川の笹目橋と戸田橋)を漕いでタイムを計測する時は順流と逆流ではタイムに差が出るだけである。当然ながら順流では流れの分、実質漕ぐ距離が短くなりタイムが良くなるのに対し、逆流では実質漕ぐ距離が長くなってタイムが悪くなるということである。これは小学校(或いは中学校?)の算数でよく出題される問題だから大学生は皆分かっている筈だが。。。
では何故、この様に可笑しな表現を使うのであろうか?思い当たるのは以下の勘違い。

  1. 同じ陸上の2点間を漕ぐのでも、流れがあると、順流と逆流では実質漕ぐ距離(タイム)が変わる。即ち、順流ではタイムが短くなり、2点間を漕破するのに必要なエネルギーが少なくて済む=軽いと感じる。逆流ではタイムが悪化し2点間を漕破するのに必要なエネルギーが余計に掛かる=重いと感じる。(でも1本当りのエネルギーは同じなんだが。。。)
  2. ボートを漕いだことの無い人が川岸から水面を行き交うローイングボートを見て、順流の中スイスイと速い速度(対地速度)で進むボートを軽々と漕いでいると観察し、逆に逆流で中々進まないボートを重くて辛そうと勝手に思い込んでいる。
  3. 或いは、漕いでいる時に自分がどの程度出力を発揮しているのか感じない鈍感な漕手が、あたかもローイングボートを川底を竿で押して進む昔ながらの川舟と勘違いして、順流では軽く、逆流では重いと勝手に妄想する。

ということだろうか?
尚、当然の事ながら、水中が重いと感じるのは逆風の時、順風の時は軽いと感じる。これは自然である。
以上