Oyajisculler's blog

(おやじスカラー戸田便り)

フォワードの出方とエントリー準備

oyajisculler2004-06-13

今日はフォワードの出方とエントリー準備についておやじの考え方を整理したい。
右上の写真はカナダナショナルクルーのエントリー直前の状態。上体・腕に十分な張りがあり、ブレードエントリーと同時に足の蹴りがダイレクトにブレードに伝わる体勢が出来ている。

フォワードとは何か?

  1. 次の水中ストロークまでのリカバリー動作であり、休憩時間
  2. フォワード中、艇と漕手を合成した系は一切推進力を発生することなく、系の速度は減速するのみ。(フォワード中に舳先の速度がストローク中より速いのは、系全体重量の80%近くを占める漕手がフォワードで船尾方向に移動するために運動量保存の法則に従い、艇体が舳先方向に移動するためである)
  3. フォワードスライドが速い程、艇体の対水速度は増大し、水中抵抗が大きくなる。結果として系全体のフォワード中の水中抵抗が大きくなる=エントリー前の艇速が低下する。

良いフォワードとは?

  1. 次のストロークを確り水中を押すためにリラックスして休めること。=ハンドルに引かれる様にしてリラックスしてフォワードする。
  2. フォワード中の抵抗増大の要因となる急激な艇速変化を避けること=急激な体重移動の加速減速を避ける=スライドは出来るだけ等速にする(フィニッシュやフォワード途中で止まるとフォワードは速くならざるを得ない)
  3. バランスが良く、ブレードが水面を擦らぬこと=出来るだけ早くストレッチャーに体重を載せるためにハンズアウェー&上体前傾を早めにセットする(早めにエントリー準備をする)
  4. スライド開始前に上体・腕を良く伸ばし、フォワード終盤の動きをスライドonlyとし、エントリー動作を出来るだけシンプルにする。
  5. スライドのフロントエンドはフォワードモーションからストロークモーションへの速度転換点であり、ここでの速度変化=加速度を出来るだけ小さくすることでピッチングを最小限にする。
  6. ブレードがエントリーし、ストロークがスタートした時に足の力がダイレクトにハンドル=ブレードに伝わる様にフォワード後半で上体・腕の張りを作る。
  7. フェザーのスクウェアリングを完了してからエントリー動作に入る。

不適当なフォワードとは?

  1. 艇上で激しく暴れまくり、常に筋肉を硬直させて休まないこと。
  2. フィニッシュやフォワードの途中で動きを止め、スライドの時間を短くし、結果としてフォワードスライドの速度が速くなること。=追っかけフォワードで加速フォワードとなる。=フォワード中の急激な艇速変化が発生し、水中抵抗が増大する
  3. バランスが悪く、ブレードが水面を擦ったり、叩いたりする(加速フォワードをするとフォワード中にストレッチャーに体重を載せることが出来ず、バランスコントロールができない)
  4. スライド中に上体・腕が緩んでおり、スライドのフロントストップ後のキャッチ直前に上体や腕を押し出す=ハンドルを放り投げる。フォワード終盤の動きが忙しくなり、エントリー動作が複雑になり、正確なキャッチが出来ない。
  5. スライドのフロントエンドでの速度転換が非常に短い時間の中で急激に行われるため、艇に大きなピッチングモーションが生じる。
  6. ブレードがエントリーし、ストロークがスタートした時に上体・腕が緩んでいて、足の力がダイレクトにハンドル=ブレードに伝わらず、上体・腕の緩みに吸収されてしまう。
  7. フェザーのスクウェアリングが遅れて、エントリーと同時になり、結果として正確なエントリーが出来ず、蹴り戻す。

まとめ

レースペースのSR36〜38といったハイレートのパドルとなると、自ずとフォワードの時間は短くなり、十分休むための時間が取り難くなる。この中でもフォワードの休息は必要であり、ここで休めるかどうかが、勝敗の分かれ目となると言っても過言ではない。良く耳にするQuick Hands Awayという基本動作があるが、これはHigh SRの中でフィニッシュ後に早めにスライドスタートの準備をすることにより、スライド時間の余裕を捻出し、フォワードで休むための手段である。これにより、フォワード終盤の動きも時間的に余裕が出て、正確なエントリーに繋げることが出来る。ボートの世界選手権の決勝を見ても、水を空けて勝つクルーは上記の良いフォワードが出来ており、負けたクルーは忙しい追っかけフォワードで休み無く動きまくるシーンを見ることが出来る。2003年世界選手権のドイツのLM8+やM4Xクルーは理想的なフォワードをしている。
以上