Oyajisculler's blog

(おやじスカラー戸田便り)

シート座面の計測点について

oyajisculler2009-03-30

今日はリギング計測の基準点であるシート座面の計測点についておやじの考え方を纏めたい。
おやじが大学生の頃はシートと言えば国内造船所の艇に装備されたもので、座面には穴の無いものが主流だった。この当時はこの座面の中での最下点を指していた。
一方、最近の艇に装備されているシートは、穴明きが一般的になっている。穴が明いているシートでどこを計測すべきか?日ボの公認コーチ習得講座では穴の縁の部分と教えられたが、縁といっても場所の特定が不明瞭で、人によって場所がマチマチなってしまう問題がある。要はハイトやヒールデプスを特定する上で単純明瞭なポイントを規定すれば良いことである。そこでおやじがT大のヘッドコーチをしていた頃はシートのセンターライン上の最下点を座面の計測ポイントとしていた。今回のレク艇リギング要件を規定する上でも人によって計測上のバラつきが出ない様にするため、この単純明瞭なポイントを計測点とすることとしている。
さて、これに対し、協力頂いている国内のボート販売業者さんから、「それは日ボの医科学委員会が規定している計測点と違うんじゃないの?」とのコメントを頂いた。そんな事は百も承知だが、計測者によって計測点の位置特定が不明瞭な日ボの現計測要領はて適当でないので、もっと単純明瞭な要領に改めるべきであるというのがおやじの考えである。さて、シート座面の計測点に関して過去からの経緯も含めて、ここで整理したい。

シート座面計測上の基準点のあり方に関する経緯:

  1. 日ボが最初に規格艇の諸数値を規定した昭和40年代?の当時は、シート座面には穴が無く、シート座面の最下点を基準点としていた。穴の無いシートでは、シートの最下点は誰が見ても同じとなっていた。
  2. 穴の無いシートの時代が長く続いたが、昭和50年代中ごろから、シェル艇用のシート座面に小さな穴が空いたシートが出回り始めた。しかし、この穴は直径が4cm程度と小さく、且つ、上記の国産の標準的形状のシート座面に穴を空けただけであり、穴の周囲のポイントを基準点とすることで、何ら実際上の問題は無かった。
  3. 平成に入って、欧米ボートビルダーの輸入艇が入り、レース艇は輸入艇という時代になった。欧米の輸入艇に取り付けられている殆どのシートは、座面に大きめな穴が空いていた。穴は直径6cm強の大きなモノが多く、前術の日本式の座面位置基準点の設定要領では、基準点の設定が難しくなってきた。
  4. おやじがT大ボート部のコーチをしていた1990年初期の頃、穴の空いたシートで、どこを基準点とすべきか迷い、種々文献をあたった。当時日本で出回っていた、米M.Purcer著の"Rigging"なる本があり、これには、「座面穴とシート座面前端の中間位置」と書かれていた。しかし、この方法では、何やら位置の特定が難しく、これでは計測者に拠って、数値が変わってしまう。また、RedgraveのComplete Bookには、シートの前端を基準とすべしと記載あり。要するにシート座面の計測点は、その当時は標準化された手法が無いという事が分かった。そこで、T大では座面センターライン上の一番低いところを基準点とすることとした。
  5. 一方、日ボの方は、1)、2)の国内での経緯を重視したのか、未だに2)の要領で計測している。しかしながら、この方法はポイントが明確にならず、計測者によって数値がバラツクという問題あり。コーチやクラブに拠っては、穴からメジャーの先端を差し込み、座面の裏側を基準点にしているケースもある模様。これでは、一体何を計測するのか分からなくなってしまう。

以上の経緯より、ボート初心者をユーザーとするレク艇開発PJでは、シート座面の計測点を簡単明瞭に規定する意味でシートセンターライン上の最下点、即ち、T大の手法を採用することした。

現在の世界スタンダードはどうなっている?

以下参考ながら、シート座面計測点に関する海外の最新情報を調べてみた。

  1. 2007年12月に購入したSykes製のおやじの自艇(1X艇)では、ワークハイトについておやじの手法で指定した数値に対し、実艇はおやじが注文したとおりのワークハイトで仕上がっていた。即ち、座面の計測点は、Sykes社もシートセンターで計測している模様。
  2. 昨年12月に中国ヤードを視察した際、FISAの元技術トップのClaus Filterが技術顧問しているWudi社(Wintech)は、シート座面計測ポイントは、シートセンターの最下点であることを確認。因みにWintechでは主に欧米各国のディーラーのコメントを集約して基準を決めており、シートセンターを計測基準点とすることが、現在の世界標準になっている模様。
  3. シートセンターをシート計測基準点とすることを明記した文献や要領書が無いかどうかをネットで検索したところ、Nuts and Bolts guide to riggingの著者である米国Mr Mike DavenportのMaxriggingというサイトに、ヒールデプスやワークハイトの計測要領をビデオにしたサイトがあった。下のビデオを見れば一目瞭然、シート基準点としてシートセンターの最下点となっている。


Mike davenportのプロフィールは下記サイト参照。
http://www.maxrigging.com/about-mike-davenport

シート計測点は単純明瞭な方法:センターライン上の最下点にすべき:

しつこい様だが、計測基準点の決め方は、次のように設定すべきと考える。

  1. 現在、世界の標準的な基準があれば、それに合わせるべき。
  2. 上記と同じことだが、Empacher, Filippi, Wintech等、現在世界のリーディングボートビルダーの基準要領があればそれに合わせるべき。(発注者と造船所がシート面の基準点が異なると、注文したリギングと異なる値の艇が出来てきてしまい、悲しい事が起きる)
  3. 誰が計測しても同じポイントになるような、誤解を招かない様な、単純明瞭な基準点の設定であるべき。

おやじの考えでは、上記3要件を満足するのは、シート座面のセンターライン(キールライン)上の最下点ということになる。
以上