Oyajisculler's blog

(おやじスカラー戸田便り)

全日本新人選手権観戦:

荒川でのスカル乗艇を終えた後、母校:東京大学の男子エイト準決勝を観戦。

以下、東大エイトのレース、及び、観戦して記憶に残ったレースについて記す。

1.男子エイト準決勝A組:無風もしくは微かな順風の好コンディション
組み合わせ:
2 仙台大A
3 中央大
4 一橋大A
5 東大A

東大は2位以内に入り、決勝進出を狙うべく、スタートから目一杯飛ばしていた。東大は序盤から目一杯力漕しており、後半は持たないと思われた。500m通過は中大についでに2位。
2QもSR38の高レートで飛ばし続け、最後尾の一橋との差がドンドン開いて行き、1000m通過時には水が空いた様に見えた。1000mで仙台大と横並びの2位。
仙台大は自力があり、且つ、後半強いクルーなので、東大と横並びということで余裕を持って二位狙いに行っている様に見えた。勿論、トップを走る中大はこの時点で後続の様子を見ながら余裕の漕ぎ。一橋大は1000m通過時点で追走を諦め、午後の順位決定戦に向けて力を温存している様に見えた。
東大は4Qに入って仙台との艇差は1/3L程度であり、スパートモードで追走。ラストは仙台が少しスパートして2/3L差の安全圏まで差が広げ、東大は3着。順位決定廻りとなった。一橋には約2Lの差を付けて完勝。久々に一橋に勝ち、東大OBは皆にこにこ顔だった。
何れにせよ、準決勝の東大エイトの漕ぎは、彼らにとって今シーズンベストの漕ぎであり、力を出し尽くしたと言えよう。
 手前5レーンが東大。
 準決勝のレース記録と順位決定&決勝の組み合わせ

2.男子シングルスカル決勝:
1000m付近までは、日体大:遠山に対して、早大:田中が食い下がり良いレースだった。
 800m付近の競り合い
しかし、1000mを過ぎて遠山が後続を突き放すべくペースアップしたところ、一気に差が広がり、遠山の圧勝。
大学生シングルスカルに関しては、現時点では遠山が他を圧倒しているという事を強く印象付けたレースだった。

3.女子シングルスカル決勝:
予選や準決勝の記録から見て、中大:米澤の圧勝と予想した。
しかしながら、決勝では、米澤が終始リードして優勝したが、2位の鹿屋体育大の四方が食い下がり、ゴール時は約半艇身差まで追い詰めた接戦となった。
 1100m付近のレースの状況
印象に残ったのは:

  1. 伴走して応援するサポーターの数が非常に少なく、また、選手への声援が殆どなく、静かなレースだったこと。
  2. 米澤選手:骨盤後傾したキャッチ姿勢となっており、キャッチからのレッグドライブをダイレクトに体幹で受け止める事が出来ておらず、極端に言うと”クニャクニャした漕ぎ”となっている様に見えた。もっと体幹を鍛え、且つ骨盤を確り立てた力強い姿勢で漕いでほしい。
  3. 四方選手:持久力があり、終盤に強い選手。今回も4Qで米澤選手との差を詰めた。漕ぎを見ると背の高い米澤選手(公称170cm)に対し、四方選手(公称161cm)はかなり小柄に見えた。先に書いた通り、静かなレースだったので伴走していた顧問の先生と話しながら観戦。四方選手は体格に対してインボードが長すぎるためか、オールの振り角が小さく、また、フィニッシュではレンジを稼ぐため過大なバックスウイングを取っている様に見えるとの印象を先生に伝えた。オールの全長やインボード長を伺ったところ、身長175cm程度の男子選手と同じ長さのオールを使っている事が分かった。身長161cmの小柄な選手がインボード88cmは長すぎますねと伝えた。

10年程前の情報ではあるが、英国Oarsports社のサイトに掲載されていた推奨リギングをこのブログで紹介した記事がある。
http://d.hatena.ne.jp/oyajisculler/20060523
Big Blade仕様のオールの場合、身長155〜165cmの小柄な漕手(恐らくジュニア選手)向けの推奨値は、オール全長:280〜283cm、インボード長:82〜84cmとあり。日本の大学チームの場合、オールはチームの共用、しかも男女共用というケースが多いのでオールの長さのアジャスト範囲は284〜289cmとなっている。従って、小柄な選手向けのインボード長は284cmが下限か?また、その場合のインボード長は梃子比も勘案すると85〜86cm程度となろうか?
何れにせよ、身長160cm程度の女子スカラーが、一般的な男子選手と同じ長さのオールを使うのは適正とは言えないと考える。

4.男子エイト順位決定戦:2m程度の東風(逆風)
午後になり逆風が吹き、軽量で力の弱い東大にとっては厳しいコンディション。
しかも東大は準決勝で全力出し切っており、余力が無い状況。
組み合わせ:
2 一橋A (準決勝は、早々に諦め力を温存?)
3 東大A (準決勝で2位を狙い、全力出し切り)
4 仙台B (準決勝は1500mまで慶応と2位争い)
5 同志社 (準決勝は不発?)

スタート100mは横一線。
250mを過ぎた辺りで、体力のある一橋大が低めのレートながらグイグイとリード。これに続くのが仙台。そして東大と同大は遅れてほぼ横並び。
東大は疲れか、逆風の影響か、レンジが切れてシャカシャカの漕ぎとなって一橋大に差を広げられていった。
750mまで伴走したが、上記の状況であり、後半は同大にも抜かれて最下位になるのは必至と考え、伴走を止めて決勝レースに向けてスタート地点に戻った。

<感想>
東大は予選スタート直後に5番がシートを外して、一橋A,同大に負けて敗者復活戦へ。敗復の組み合わせは、不幸中の幸いで運よく勝ちやすい組に入る事ができ、準決勝へ進出。但し、敗復上がりの4艇中、東大のタイムは4位だった。
準決勝は4杯レースの2組で1,2位が決勝、3,4位は順位決定。ということで準決勝は負けても順位決定に回れる。
私の客観的予想としては、東大は準決勝進出クルーの中で地力的には8番手であり、どんなに頑張っても決勝進出は不可能に見えた。
そして新人戦は、準決勝と決勝(&順位決定戦)が同日に行われるので、決勝でメダルを取る上位クルーは、如何に準決勝で力を温存するかがポイントとなる。また、決勝進出が不可能と判断したクルーは、準決勝中盤で判断して途中で諦めた場合は、順位決定に全力を尽くすべく余力を残すために艇速を緩めるという選択も出来る。
実際、一橋大はその戦術を取っていた模様。
近年、東大は全日本級の大会で、決勝進出&メダル獲得する経験が出来ておらず、上記の様な、少々”ずる賢い戦術”が思いつかなかったのか、或いは相手と自分たちの力量さを把握できず、準決勝で最後まで全力を出し切ったのかもしれない。
この結果、東大は順位決定戦でトップの一橋に大きく差を付けられて最下位となった。
大会を終え、OBや第三者の評価は、今大会での最後のレースである順位決定戦での結果のみ。この意味で東大は又しても宿敵一橋に大敗したという事になる。
草レースでも良いので、出来るだけ多くのレースに出て勝つ経験を積むべきと思う。

5.男子エイト決勝:
上記の順位決定戦後に行われた決勝では、序盤でリードした中大と明大が1000m過ぎまで僅差で接戦を演じた。
 800m付近のレースの様子。
後半は、準決勝の後半で大きくレートを下げて力を温存した明大が、決勝では全力を出し切り、4Qで一気に中大を突き放して水を明けて優勝した。
 レース終盤の様子。明大が大きくリード。
因みに優勝した明大が使用したエイト艇は今年もFilippiのF42型。やはりF42よりEmpacherの84型より性能が良いと思う。
また、決勝で4位となった慶応大のタイムは、6:23で、順位決定戦一着の一橋大の6:29より速かった。
という事で、一橋大が準決勝で決勝進出を早々に諦め力を温存した事は、順位決定戦で全力を出し切り勝つという意味では、良い判断だったと言えよう。

以上