Oyajisculler's blog

(おやじスカラー戸田便り)

リギングその2(スィープとスカル)

oyajisculler2004-10-02

ボート競技には、2種類ある。即ち、1人の漕手が両手で1本のオールを持つスィープと、片手に1本ずつ、1人で2本のオールを持つスカルである。おやじが学生の頃、20年以上前のことだが大学のボート競技といえばスィープを指し、スカルは各クラブで所有するボートの数が限られており、スカルを漕いだことが殆どないという選手が多かった。最近では、高校生の公式レースは全てスカル種目となり、スィープ種目は大学生になってから取り組むというシステムになっている。(稀に高校生が全日本新人戦にエイトやフォア等のスィープ種目に参加することはある。)基本的なブレードワークはスィープもスカルも同じではあるが、その長所・短所について考察してみたい。

スィープ:

1人で1本しかオールを持たないので、1人でボートを漕ぐと真っ直ぐ進まず、サイド漕ぎとなってボートが回ってしまう。従って、スィープの場合は必ず、2人1組が最小限の競技ユニットとなる。ここにスィープ競技の難しさがある。以下、スィープの短所と長所について考察してみたい。:
<短所>

  1. クラッチ軸を中心として回転運動するオールを1人で1本しか持たないので、当然ながら、漕手はサイドが決まってしまう。大抵の漕手は得意なサイドが決まっている。(即ち、サイドチェンジが難しい。)
  2. 1人では練習できない。
  3. サイドで漕ぎ手の技量や力がバランスしていないと、サイド負けが発生し、当て舵をしないと真っ直ぐ進まない状況が往々にして発生する。
  4. オールが回転運動するので、キャッチやフィニッシュ時に(ボートの長手方向とオールが直角をなす推進効率が最も良い部分から大きく外れたところ)オールの回転角に合わせて腰より上の上体を回す(捻る)ことが必要となり、推進力に寄与しない横方向の力を使わざるを得ない。この部分のロスがスカルより推進効率が劣るところとなる。例えば、2-,4-艇のタイムは、2X,4Xのタイムより劣る。
  5. オールの回転角(キャッチ角、フィニッシュ角)等、リギングが全ての漕手で調和されていないと、艇が蛇行したり、バランスが崩れたりする原因となる。従って、リギング調整、ストレッチャー位置調整等は注意深く設定しなければならない。
  6. スィープの場合、ローイングテクニックが難しいこともあり、初心者時に好ましくない癖や間違ったローイングイメージをつけ易いので、コーチやベテラン漕手は間違った漕ぎ方やリギングにならぬ様に十分注意する必要がある。
  7. ボートに対しても、毎ストローク捩れ方向の力が繰り返し加わるので、ボートが歪み易い。

<長所>

  1. 1人で1本のオールでよいので、費用がスカルより安くて済む。
  2. 漕手も自分のオール1本だけを管理すれば良いので、道具のメンテナンスが行き届きやすい。
  3. 川に出したり等、1人1本のオールを持てば良いので陸送が容易である点、及び岸に付けるときにリガーが1人おきにあるので、船台がない場所での上げ下ろしがスカルより便利である。全般的に悪条件の練習環境に対してタフである。
  4. 逆サイドの漕手と上手く息を合わせないと力が出せないので、日頃から互いの意見をぶつけ合い、協力しながら漕ぐことが前提となる。究極のチームスポーツということで精神面の修行になる。

スカル:

片手に1本ずつ、1人で2本のオールを持つので1人単位でも乗艇できる。全般的に短所・長所がスィープとスカルで入れ替わる。
<長所>

  1. オールを1人で2本持つので漕手毎のサイドというものはないので、誰とでも組み合わせが効く。(稀に、クロスオーバー時の左右の手の高さを逆(S-sideを上にする)にするものもいるが、今はこの種の漕手は絶滅したか?)
  2. 1人で練習できる。
  3. 個人毎にバランスとサイド負けの問題が解決できていれば、漕手の体格・漕力の差はクルーのバランスやサイド負けは生じないので、チームボートは簡単である。
  4. オールが回転運動するところは、スィープと同じだが、両手に1本ずつオールを持つので、上体の捻り運動は生じない。従って、胸より下の体は推進力に寄与する船の長手方向の力のみを発生すれば良く、推進力に寄与しない横方向の力は不要であり、推進効率が良い。(オールの回転運動に対処するため、腕はオールの回転運動に合わせる必要があるが、横方向の力は左右でキャンセルしあうので、積極的に横方向の力を発揮せず、横方向の動きに対しては、肩・肘・手首はピンジョイントと考えれば良い)
  5. オールの回転角をクルー内で合わせることはスィープもスカルも同じであるが、基本的にサイド負けはないので、ストレッチャーの位置は、フィニッシュ時に漕手が最も漕ぎやすい体勢となる様に調整すれば良い。(相対的に管理が簡単である)
  6. 1X艇で1人で練習すれば、自分の漕ぎに対して100%フィードバックされるので、正しい漕ぎ型やリギングを容易に体感できる。勿論、基本のリギングは予め習得する必要があるが。。。。
  7. ストローク中に艇に加わる力は左右対称なので、捩れなどの問題は発生しない。

<短所>

  1. 1人2本のオールを持つ必要があり、コストが高い。また、1本折れた場合、1本だけ購入するというのは銘柄・仕様を合わせる上で難しいので、オールの購入は2本1組単位となる。
  2. ハンドルにラバーグリップが付いているが、毎日漕ぎ続けると2ヶ月もするとグリップが磨り減るので、定期的にグリップを交換する必要があり、木製ハンドルのスィープよりコストと手間がかかる。
  3. リギングで調整すべき項目はスィープと同じであるが、オール・リガーがスィープの2倍ある分、リギング調整に手間がかかる。
  4. 川に出したり等、1人2本のオールを持たねばならず、陸送が面倒である点、及び岸に付けるときにリガーが邪魔になり、船台がない場所での上げ下ろしがスィープより難しい。常時両手が塞がっているので、緊急時等悪条件の練習環境に対して対応力が弱い。

以上、スカルとスィープを考察してみたが、社会人クルーが偶にコースに来て、不特定の漕手と一緒に戸田コースで漕ぐ場合は、スカルを漕ぐのが容易であるということが言える。但し、リギングをキチンとやらねばならないのはスィープと同じであり、漕ぎやすいという反面、コストと手間が余計にかかるということをお忘れなく。

以上