Oyajisculler's blog

(おやじスカラー戸田便り)

M1Xレース:

本レースの決勝組み合せと予選、順位決定準決勝の持ちタイムは以下の通り。

  • 2レーン:伊藤(東大)、7'51", 7'33"
  • 3レーン:栗原(日大)、7'41", 7'28"
  • 4レーン:吉原(早大)、7'53", 7'32"
  • 5レーン:井上(京医)、7'56", 7'46"

発艇前に予想したレース展開は、土曜日のログに纏めた通りだが、決勝レースという事もあり、スタートは皆思い切り飛ばして来ることが予想された。
母校の後輩であり、伊藤選手のW.Upにずっと付いて伴走したが、見たところ、今一、トップスピードでのアップが不足している様に感じた。また、ずっと見ていたが、静止スタートの練習をやっていない様にに見えた。(本人に後で確認したら、静止スタート練習やったとの事。。。)何れにせよ、決勝本番では静止スタート及びトップスピードでの飛び出しがレースの如何を決める要素でもあり、W.Upではこの点を確りと確認する必要がある。しかし、客観的に見るに、彼のW.Up内容からは、その意味を十分に理解できているとは思われなかった。(コーチではないので、その点は指摘することはしなかったが。。。)
スタートでの飛び出し、大丈夫かな?と心配しながら見ている中、レースがスタートした。絶対に勝つぞという凄い意気込みで栗原が猛然とスタートダッシュを決める。スタートの1Qの強い吉原や井上もこれに続く。果たしておやじの危惧した通り、伊藤のスタートは、普通のタイムトライアルのような力感の感じられないスタート。栗原のダッシュは250m以降も続き、300mでは早くも後続と水が空いた様に見えた。一方、伊藤は出遅れ、500m通過時は一人トップ争い圏外で漕いでいた。その後、栗原の独漕は続き、2位の吉原は1Qの疲れが出たかペースが落ちてきた。ここで伊藤が吉原を捕らえ、1000m通過時には1シート程吉原を抜いた。但し、1位の栗原との差は5秒あり、完全に水が空いていた。3Qは、3人の艇差は殆ど変わらず1500m通過。1600m付近で3位を漕ぐ吉原が伊藤を抜くべくロングスパートを入れ、伊藤を捕らえ、逆に1シート程のリードを奪い返す。2人の長いスパート合戦は1900mまで続いた。この間、2人はトップを行く栗原との艇差をミルミル詰めて行く。そしてラスト100mを切ったところで、伊藤が渾身の力でダブルスパートを入れ、一気に吉原を抜き去り1シート程度の差を付けゴールイン。銀メダル争いに勝ち、見事、東大のインカレM1X史上最高成績の銀メダルをゲット。ラストQのスパート合戦は見応えがあった。各Q毎のラップは以下の通り。

  1. 栗原 01:46.46 03:39.32 05:31.60 07:22.07
  2. 伊藤 01:51.30 03:44.11 05:36.71 07:24.24
  3. 吉原 01:49.48 03:44.51 05:37.08 07:24.51
  4. 井上 01:50.84 03:46.06 05:43.69 07:35.30

上記のラップを見て分かる通り、伊藤の500m以降のタイムは優勝した栗原より速い。要するに1Qタイムで栗原はこのレースの勝ちをモノにしたという事だ。ボートという競技は、特に決勝ではタイムでなく、着順を競う競技である。良いタイムが出た方が良いが、タイムを狙ってイーブンペースでスタートで出遅れると、スタートで飛ばしたクルーからみれば、イーブンペースで漕ぐ後続のクルーは、ペースメーカーとなってしまう。先行するクルーは、後続クルーの背中を身ながら、後続のペースに併せてトップをキープして逃げ切れば勝ち。だから、ボート競技では1Qでの出だしが重要となる。優勝した栗原は、その事をよく理解しており、無理をしてでも1Qを飛ばした訳である。これに対し、伊藤はトップレベルでの厳しいレースの経験に乏しく、この事を十分に理解していなかった結果、こういうレースをしてしまったのだと思う。彼が、今後、トップスカラーの仲間入りをするつもりがあるのなら、今回の失敗を反省すべきところ。この辺りが超一流と並みの一流を分ける境界と思う。昔、武田選手がインカレで優勝を逃した時に、「銀メダルは欲しくない」と捨てたという話を聞いた事がある。 やはり超一流選手は、勝ちへの拘りが超一流なのである。