Oyajisculler's blog

(おやじスカラー戸田便り)

目の前が紫色:

あれは大学4年のインカレエイト決勝レースだった。いつもの様に250mで半艇身先行して更に艇差を広げて500m付近で1艇身差をつけようとした時、競艇場の建物を過ぎたところで強烈な横風に煽られてバタッ!とバランスが崩れた。ここで艇速を失ってなならじとそこから更に水中を押しまくって、艇差をキープした。これをクルー全員で同じ様に頑張ることが出来れば良かったが、後で振り返ると整調ペアだけで頑張ってしまった様だ。整調のおやじと7番だけがここで大きな乳酸負債を負ってしまった。その後、#2、#3クォーターと追いすがる一橋大の度重なるアタックの度に、半枚上げや1枚上げを入れて1艇身差をキープした。1500mを過ぎると、乳酸負債と酸欠が限界に達し、視界が狭まり暗くなりはじめる目の前が紫色になってきた。ここで水中を落とせば一気に艇差を詰められることは間違いないので、無い力を振り絞って必死で艇差をキープする。地獄の苦しみとはこのことである。気を失いそうな中、残りり500m漕ぎ続けた。レースがこれほど苦しいことは無かった。ラストスパートを無理に入れるとミスオールする可能性が僅かにあるので、COXに指示してスパートを入れずにゴールした。レース後のミーティングで「今日は序盤でバタついてラストが苦しくなった。最後は苦しくて気を失いそうだった」と言った。すると後ろの方の後輩が「前の方はそんなに苦しかったんですか?後ろの僕等は、そんなに苦しくなかったですよ。ラストスパートが入らないので力が余ってウズウズしていましたよ!」と言う。このヤロウ、お前等がチャンと頑張ればもっと楽なレースだったのに、と思いながらも、確りシンクロすればもっと艇速が出せると思って妙に安心したことを憶えている。
後にも先にもボートレースでこれ以上苦しい経験をしたことがない。
いっそ気を失った方が楽だというのはこのことを言うのだろう。
以上