Oyajisculler's blog

(おやじスカラー戸田便り)

本ビデオの要点解説:

昭和57年度東大対校エイトが狙っていたものは、全日本選手権エイトで4連覇を達成するために、如何なるコンディションでのレースでも、クルーが持っている力を出し切り、レースに勝つこと。この為に取組んだのは、如何なる状況でも力を安定して出す為の漕法・リズムである。特に8月の全日本選手権決勝時に可能性の高い逆風に強いクルーを造ろうと取組んだ。この年度の東大対校クルーが目指したのは、次の通りであり、徹底したこの取組みに成功し、全日本選手権エイト4連覇を成し遂げることが出来た。DVDの映像はこの取組みの狙いが良く表現されている。

1)如何なるコンディションでも安定して力を発揮する為の「溜めて跳ね返る」リズムの徹底:
漕法・リズムは100のクラブがあれば100通りのアプローチ方法があってよい。世の中には、これが絶対最適な唯一の理想の漕法などと言うものは存在しない。物理法則に則ったアプローチであれば、いろいろな漕法・リズムがあって良いと思う。重要なのはクラブ内で理想とする漕法・リズムのイメージを統一し、この実現に向けて徹底的に取組むことである。昭和57年度の漕法・リズムの狙いは次の3点:

  1. 水中のストロークポイントをキャッチからの強い跳ね返りを重視し、キャッチで水を掴んだら、フィニッシュまで綺麗な一山のベンドカーブを描く様に一漕ぎでネットリと間断なくフィニッシュまで押し切る。(ベンドカーブはローイングタンクので選手全員分を計測記録した)
  2. 上記1項を精度良く且つ効率良くブレードで水を捉えるために、FWDの終盤を減速し、キャッチ前に溜めを造る。減速FWDでキャッチ前のブレードの動きはユックリ動かすことが出来るので、キャッチ前のブレード高さを低くコントロールする精度向上や、エントリーと跳ね返りのタイミングを合わせ易くする効果も併せて狙った。この1と2項を組み合わせた「溜めて跳ね返る」ことを強調した。
  3. FWDをラッシュするとFWD中の艇の速度が加速し水中抵抗が増大するので、限られたFWD時間の中でシートスライドの速度を抑えるために、フィニッシュ後の素早いHandsaway+上体前傾を強調し、出来るだけ早いタイミングでスライドを開始し、スライドを出来るだけ等速に動く様にした。

上記3点を基本とした漕法・リズムを対校選手内でイメージを共有し、これを実現するために冬場の乗艇練習から取組み、徹底的に漕ぎ込んだ。
2)逆風で力を出す為に、徹底的して逆風での漕ぎ込み:
この時代は、全日本選手権は8月末の日曜日の午後3時頃と決まっていた。(インカレ決勝は前日土曜日の午後)8月の午後3時頃はかなり高い確率で南西の逆風が吹くことが経験的に分かっていた。この事実を前提に、徹底して逆風での練習に注力した。通常の学生クルーは軽く艇速の出る順風が大好きで、逆風を出来るだけ避ける様にしていた。当然ながら、逆風を得意とすれば勝てる確率が一気に高まるので、統計データを踏まえてこれに取組んだ訳である。勿論、順風でも練習したが、どちらかと言えば、逆風での練習の方に力を入れていた。このため、レースで順風が吹くと多少不安になることがあったことは否めない。幸い、この年度の決勝レースでは殆ど逆風が吹き、順風が吹いたことは無かった。順風が吹かなかった為、決勝での最高タイムは6分0秒で、残念ながら6分が切れなかった。(タイムだけは目標を達成できなかった。)このDVDの映像音声でも逆風時のビュービューと唸る風切り音の中、対校クルーがパドルに取組んでいるシーンが収められている。

このDVDはLBRCクラブ内に回覧すると共に、東大漕艇部に1本謹呈する。

以上