Oyajisculler's blog

(おやじスカラー戸田便り)

エイト艇:ASTRAIA号の整備記録

現在、WMG60'sチームが乗艇練習で使用しているエイト艇は、鹿児島大学が所有しているEmpacher製K84型。艇名はASTRAIA号。
鹿児島大学がインカレなどでエイトのレースに出場する際に使用するため、戸田の国立競技場艇庫に保管している艇。
製造記録の銘板シールを見ると、1998年と記録されている。即ち、船齢22年だ。(艇重量は94.1kg)
戸田の大学チームの艇だと、22年も使うと船底が傷だらけになったり、ストレッチャーボードが老朽化するなどしてボロボロになってしまう。しかし、地方のチームが戸田遠征時にしか使用してこなかったこともあり、船体やストレッチャー廻りは船齢の割に健全な状態にある。
昨年12月、鹿児島大学OB会を介して、日立明招待レースや、オ盾、更には来年のWMG2021関西でお借り出来ないか打診したところ、借艇の了解を頂いた。

ASTRAIA号の事前検査時の状態:

まず、1月の年始早々に艇の状況を観察し、パーツ交換も含めて交換すべき部位を調査した。
 ASTRAIA号の舳先
 フィン、横から見ると目立たないが前縁に傷があり、変形している。
 割れているコロ。(8シート中、半分の4シートに関してコロが割れていた)
 同上
 大きく曲がったバックステー(#2番)
 EMPACHERの製造番号などを記録した銘板
 ソールがベロンと剥がれたシューズ。両端フォアの4足は1998年建造時のもので20年以上経過してボロボロ。
 最後に使用したクルーが、荒川の川底の泥に足を漬け、泥のついた足で乗り込み、そのまま洗い流さずに納艇していた。
 同上
 分割接合部:木製合板のフランジ部が萎縮変形して接合部に隙間があった。
 同上。よく見ると隙間の中に金属製のガイドパイプが見える。フランジの厚みが薄くなった分、ボルトのガイドパイプ(スリーブ)が接合面側に飛び出していた。

既にブログで紹介したものもあるが、以下、改めて整備の内容を纏めて記載する。

1:フィンの交換:


過去に荒川などに出艇した際、岸蹴りや着岸・揚艇時に護岸にフィンをぶつけた様で、フィンが少し変形していた。曲げ戻してあったが、キチンと修正できていなかった。また、戸田コースは4月以降、水温が上がると藻が繁殖して、フィンに絡みついて操舵不能になる事がある。そこでフィンを新品に交換する際に、前縁角度を45度にした藻対策フィンに交換した。
フィン交換作業の詳細は以下のブログ参照:
ASTRAIA号に藻対策フィン取付: - Oyajisculler's blog

2:ストレッチャー廻りとシートコロなどの整備:

2/15(日)、WMG60'sの日立明レガッタ2000mレースクルーの初回乗艇練習前に、ASTRAIA号の整備を行った。
予定していたシートのベアリングホイールの交換、ローイングシューズの交換、そしてクラッチブッシュの交換(4度→3度)を実施。
整備して行く中で、予期せぬ不具合も見つかり、何だかんだで整備やリギング調整は2時間近く掛かった。
因みに予期せぬ不具合とは:

  1. バックステー伸縮部の締め付け部分のパイプに切り込みが入っておらず、カナノコで切り込み加工を要した。
  2. 建造時のリガー配置がイタリアン等の変則リガー配置だった模様。今はS-side整調のノーマルリガー配置となっているが、リガーを配置替えする際に、手違いがあった様で、リガースプレッド84cmが設定できないものがあった。→これはリガーを入れ替え対応。
  3. 船体の分割・接合部が老朽化でキチンと接合出来ておらず、乗艇中に接合部からギシギシと軋み音が発生している。これは修理専門業者に修理頂く必要あり。

3:分割・接合部の不具合修理など

前項で記載した分割・接合部の不具合に関して、艇修理業者の西村さんに修理をお願いした。
修理の内容は、接合断面側にはみ出たボルトガイド用金属パイプ(スリーブ)を切削除去し、断面が隙間なく密着できるように加工すること。
修理の結果、接合断面が隙間なく密着し、ガタツキや軋み音が発生しなくなった。また、剛性も向上した。
以下、写真で示す。
 修理中の様子。
 修理後の分割断面(舳先側)。
 同上、ボルト側(船尾側)も、1か所、金属パイプがはみ出ていたので削って頂いた。
 修理後、ボルト接合した分割部。隙間が無くなった。

曲がったバックステーの曲げ戻し:
 曲がった2番のバックステーは、古いオールを使って反対側から曲げ戻した。

4:艇重量調整用デッドウェイト


銘板に記載された艇重量は94.1kg。日本ボート協会主催のレースであるオ盾レースの艇下限重量は、96.0kg。
即ち、計算上は1.9kg重量が不足している。

最新の競漕規則では、艇に確りと固定されてあるコックスボックスのケーブルやスピーカーは艇重量に含むことになっている。
桑野造船に確認したところ、エイト用ケーブルの重量は490g。スピーカーは1個 168g。スピーカーは2個取り付けられているので、336g。従い、ケーブルとスピーカーの合計重量は、826g。重量のばらつきもあるので、800gとみる。

即ち、現状の艇重量は、94.1kg + 0.8kg + 0.1kg(SpeedCoach台座など雑物)= 95.0kg。

必要な艇重量は、計測誤差は±0.3%程度あるとみて、マージン0.3kgを加算して、96 + 0.3 = 96.3kg

即ち、艇重量規定をクリアするために必要なデッドウェイトは、96.3kg - 95.0 = 1.3kg

デッドウェイトは、ストレッチャーの下部固定用ギアレールに取り付け可能なものを考えた。
近くのホームセンターへ行き、デッドウェイトに適した金属プレートを物色。1枚200g程度のものを探したところ、木工用ジョイント金具で1個250g程度のものがあった。
これを6個購入。
また、ギアレールに固定するためのM6ステンレスボルト・ナット・ワッシャーをも購入した。合計で4000円弱。

自宅に戻り、重さを計測:
 ジョイント金具(デッドウェイト材):248g/枚
 固定用ボルトナットセット(12g)込みのセットの重量: 260g/セット
 今回準備したデッドウェイト6セット

ASTRAIA号に必要なデッドウェイトは1.3kgなので、上記のデッドウェイトセットを5セット( 260g x 5set = 1.3kg)搭載することとする。
尚、デッドウェイトを搭載するのは、艇重量計測が行われるオ盾レース時を予定。

上記の通り、ASTRAIA号の艇整備とデッドウェイト準備は完了。

後はレースに向けて練習あるのみ。

以上