Oyajisculler's blog

(おやじスカラー戸田便り)

仏スカラー:Jeremie Azou選手について

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10月3日のブログで、仏スカラー:Pierre Houinの乗艇動画について紹介した。
Houin選手はリオ五輪のLM2Xで金メダルを獲得した世界一流の選手だが、そのLM2Xで整調を漕いだスカラー:Jeremie Azou選手について、今日は取り上げてみたい。

仏LM2Xクルーに関して良く知るボート通であれば、皆さん良く知っている事と思うが、Azou選手はHouin選手の兄貴分、いや師匠にあたる選手であり、軽量級スカラーとしてはボート史上過去最強の選手の一人と言ってよいだろう。

Azou選手のプロフィール:

World RowingのHPに掲載さえているAzou選手のプロフィール:
http://www.worldrowing.com/athletes/athlete/25331/jeremie-azou

同、Wikipedia:
https://en.wikipedia.org/wiki/Jérémie_Azou

Azou選手のプロフィール要点 ( )内はHouin選手のプロフィール:

  • 生年月日:1989/4/2, (1994/4/15)
  • 身長・体重:178cm・71kg, (182cm・74kg)
  • Ergo 2000m best: 5'57"5 (6'05"7)
  • LM2Xでの直近3年間の戦績:2015年~2017年の3年連続金メダル、(2016/2017はAzouとペアで金メダル、2018年はFCで1位)

未だ29歳で、まだまだ十分に世界で戦える選手だと思われるが、2017年のWRCで金メダルを取った後、引退してしまった。残念!

因みに、Azou選手が引退した後、Houin選手は別の相棒と組んで出たWRCでは、全く振るわず、FA進出どころかFC進出に留まった。思うにAzou選手が乗っていたから仏LM2Xは世界一に君臨していたということだろう。

Azou選手の漕ぎ:

2017年WRCのレース動画:
Männer-Doppelzweier (LM2X)| Leichtgewicht | Finale | Sarasota Bradenton 2017
https://www.youtube.com/watch?v=L95qw8QLnjY

2017年 Royal Henley Regattaのレース動画
Oppo & Ruta v Houin & Azou - Doubles | Henley 2017 Semi-Finals
https://www.youtube.com/watch?v=LUVk5R5q2Eg&t=120s


日々のトレーニング(含む乗艇練習)の動画:
L'EQUIPE 21 : Jérémie AZOU, champion d'Aviron
https://www.youtube.com/watch?v=w6ueBMW6igQ

Azou選手の漕ぎ:
LM2Xのレース動画を見ると、AzouとHouinで漕技のレベルにかなりのギャップがある様に見える。Houinは普段の低レートUT漕ではなかなか良い漕ぎが出来ているがレースではフィニッシュレンジを切って漕いでいる模様。
Azou選手はFinishレンジが長く、且つ、ブレードのリリースがクリーン。
また、リカバリーでのブレードクリアランスが大きく取れている点がGood!

Azou選手のErgoの漕ぎ

フランスのIndoorRowing大会での2000mTT(2013年):
Jérémie Azou : un titre et un nouveau record d'aviron indoor !
https://www.youtube.com/watch?v=LvPtqJVFaNQ

2013年に開催されたフランス国内でのIndoor Rowing大会の動画。
Azou選手の記録は6'06"8で当時の軽量級選手のフランス最高記録だった模様。
Azou選手の隣で漕いでいるのは、Houin選手。漕ぎ終えたのがAzou選手の約6秒後なので、記録は6'13"辺りか?

Azou選手のErgoの漕ぎで、気づいた点を幾つかコメントしたい。

  1. 序盤から中盤でのレートはSR30で大きくユッタリ漕いでいる。
  2. ハンドルのドライブ中の軌道は、概ね乳首のレベルでストレートにドライブしている。但し、ハンドルが胸に衝突するのを避ける為?若しくはフィニッシュレンジを伸ばす為?にラストは首の方向へ向けて引き上げている。
  3. ドライブ中は、両肘を下に向け、両脇を締めた状態で手首を高く保ちながら腕を畳み、ハンドルを高い軌道で引ききっている。指はハンドルを引っ掛けているだけで、手首から先は全く脱力している。
  4. 両手は、グリップエンドを持って、目いっぱい広くハンドルを持っている。これは肩甲骨廻りの背中の筋肉を使ってハンドルを引き付ける為にこうしていると思われる。
  5. ラストQ辺りから、レートを35に上げてスパートモードへ。特にラスト250m?のスパートではレートを40以上に上げる為、フィニッシュの引き切りはハンドルを首まで上げることはせず、胸に当てるようにしている。

以上の通り、Azou選手は、腕の使い方(肘の使い方)に関して、乗艇中とErgoを漕ぐ際では全く異なる動きをしている。
乗艇では、ハンドルの軌道が円運動であるので、肘はある程度横方向に開く必要があること。また、ブレードリリースの際にハンドルをタップダウンする必要があり、フィニッシュ引き切り時にハンドルをお腹の上に落とす必要がある。
 乗艇でのフィニッシュ引き切り(ブレードリリース時)

一方、エルゴではハンドル軌道が直線であり、また、ハンドルをタップダウンする事は不要である。また、レンジが長い方が大きな出力が出るので、首まで引くようにしてレンジを稼いでいる。また、肘を下に向けて両脇を締めた方が背中の大きな筋肉を使って強く引ききるようにしている。
 Ergoのフィニッシュ引き切り(首まで)

以上