Oyajisculler's blog

(おやじスカラー戸田便り)

エイトのGerman riggingをトライ

土曜日早朝のエイト乗艇で、静止スタート練習を真後ろから見たところ、静止5本からハイピッチ10本に入ったところでストロークサイド側にスーッと艇が曲がってゆく傾向が見られた。
両サイドのエルゴ2000m記録計測生値は、バウサイドの6'37"に対して、ストロークサイドは6'39"と2秒負けている。スイープ艇では、ノーマルリガー配置の場合、両サイドの漕力が同等の場合は、構造力学上、バウサイドがサイド勝ちする。
このサイド負けを防止するため、東大ではサイド分け時に将来有望な漕力の強い漕手をストロークサイドにする事としている。スイープのサイド振り分けに関しては、以前、ブログに特集記事を書いたモノがあるので、それを参照されたい。
さて、今年のインカレエイトクルーだが、僅かだがバウサイドの方が漕力が強く、今後、レースまでにこの問題は解消されないと考える。対策として、バウフォアのリガー配置を逆サイドとするドイツ式リガー配置(German rigging)とするか、全体のリガー配置を逆サイドにする二つの対策が考えられる。今回のサイド負けは僅かであり、逆サイドにする程のモノでないない事、またバウサイドにエイトの整調 を担える適任者がいない事を勘案し、前者をトライすることとした。
東大では、フォアクルーでは、サイド負け対策としてイタリアンリガー配置を採用する事は良くある。(昨年のインカレ付きフォアのジュニアクルーや、今年の東日本付きフォアのAクルーがイラリアンを採用)が、エイトの変則リガー配置の採用はあまり例が無い。(確か記憶では、H20年度の対校エイトが一時期ドイツ式リガー配置を採用していたが、インカレなど公式レースにエイトの変則リガー配置の採用例は無いと思われる)
昨年度、購入したフィリッピ社製の天寵だが、先々、フレキシブルにリガー配置を変更できる様に、予め逆サイドのリガーを6脚購入していた。即ち、整調 、7番、6番、3番、2番、バウの逆サイドリガー。4番と5番はリガーの取り付けボルト穴の幅間隔が同じなので、逆サイドリガー不要との事だった。さて、昨日のビデオセッション後クルーにリガー配置変更作業をさせたところ、4番の逆サイドリガーが無いので、バウペアの逆サイド化までしか出来ないとの事。止む無く、バウペアのみ逆サイド化して午後乗艇を実施。横揺れの安定性が少し改善する様に見えた。しかし、ストロークサイドのサイド負けは、まだ若干残っていたので、3番ペアも逆サイド化してドイツ式リガー配置を完成させたい。揚艇後に天寵のリガー取り付けボルト穴の間隔をメジャーで計測したところ、3番、4番、5番が同じ間隔となっている事が分かった。そこで、3番と4番のリガーを付け替えて、ドイツ式リガー配置を完成させた。
日曜日の早朝乗艇は、このドイツ式リガー配置で漕いだ。この結果、前日早朝のノーマルリガー配置に比べて以下の様な変化が観察された。

  1. 静止スタートからハイピッチに掛けてのサイド負けが殆ど無くなり、直進性が改善された。尚、スタート練習では静止5本で若干バウサイドが負けるケースも見られたが、2番と、4番がスタートを確り押す事で解消された。
  2. 操舵性が改善された事が、コックスより報告された。後述する文献に記載されているが、ノーマルリガー配置では、毎ストロークで、船体が蛇行するFish tail現象が発生して抵抗性能の悪化及び操舵性が難しくなる傾向がある。ドイツ式リガー配置は、船体中央を境として前後対称のリガー配置となるため、蛇行が解消されて操舵性が改善できた。
  3. 横揺れ安定性の改善。ノーマルリガー配置では毎ストローク、船体がローリングする現象がよく見られるが、ドイツ式リガー配置採用により、このローリング現象が少し改善された様に見えた。
  4. ドイツ式リガー配置採用で、唯一、懸念されたのが、バウと整調 が同じサイドとなる為、レースレートで、バウの泡が整調 のブレードに当たって整調 が漕ぎにくくなる事。しかし、見たところバウの泡も整調 のブレードがエントリーする迄の時間で概ね拡散されてしまうため、然程問題とはならなかった。
  5. 船体中央の5番と4番が同じサイドで漕ぐので、整調 フォアのリズムがバウフォアにダイレクトに伝わりやすい様だ。逆に言えば4番と5番のリズムにズレがあれば、簡単に見えるので合わせやすいと思われる。

以上より、暫くは、このドイツ式リガー配置のままトレーニングを継続することとする。因みにこのドイツ式リガー配置だが、北京五輪で金メダルを取ったカナダクルーが採用していた実績が評価されたのか、その後、ロンドン五輪で金メダルを取ったドイツクルーや、昨年度世界選手権優勝の英国クルーが採用している。

ドイツ式リガー配置などTandem Riggingに関する文献
http://wikis.zum.de/dmuw/images/2/28/Tandem_rowing.pdf

HC 氏家祐二