上記写真を見て以下の通り考察してみた。
1)舳先から出る波:
- (A)舳先が深く浸かり、鋭いナイフの様な形状になっているEmpacher, Filippi, FISA型船型:鋭い舳先で2次元的に両側に引き裂かれた水面が、波長の短い細かな波紋を作っている。
- (B)舳先が浅く、断面形状が円弧に近いSykes M20やM26:舳先が非常に浅いので、水に乗り上げる様にして水面を3次元的に周囲へ押し出している。舳先からは波が出ない代わりに、舳先から艇全長の30〜40%程度の付近から波長が長く、ウネリの様な引き波が出ている。
- 両者の違いは、(A)の通常船型が造波抵抗の最小化を狙ったものに対し、(B)のSykes船型は、濡れ面積の最小化の方を優先していることが分かる。(レーシングボートに於いては、摩擦抵抗が支配的であり、造波抵抗比率は非常に低い)
2)船尾から出る波(船尾端から出る白い泡とハの字型の曳き波):
- (A)相対的に船尾が深く水に浸かっているFISA型等、通常船型では、船尾端から白い泡が少し出るの同時に、ハの字型の波が出ている。船尾端が深い船型程、これが顕著である。Filippi艇やFISA型ではハッキリとしたハの字の波が見える。(Empacherの船尾は船尾端に向けて没水船体が徐々に浅くなる様に工夫しているので、上記の船型よりハの字型の曳き波が小さい)
- (B)SykesのM20は、その特異な船尾形状の効果で上記(A)の白い泡やハの字の波は全く見られない。船尾に於ける推進抵抗が小さいことが分かる。
尚、Sykes M26はM20に比べると、船尾がやや深めに浸かっているので、白い泡やハの字の波の様なものが僅かに出ている。しかし、(A)船型に比べると少ない様だ。(Empacher船型とSykes M26の船尾波は概ね同じ程度)
上記は簡単な観察だが、定点から写真撮影することで、こういった比較が出来て面白い。12月下旬におやじの新艇(Sykes M20)が戸田に到着する予定。17日の新艇到着が待ち遠しい。
<追伸>
ボートの抵抗は、水中抵抗と空気抵抗からなる。エイトにおける抵抗成分を分解すると以下の通りとなる:
水中抵抗(約85%):
- 摩擦抵抗: 78%
- 造波抵抗: 5%
- 浅水影響他:2.5%
空気抵抗(約15%):
- 艇・リガー: 2.5%
- オール: 6%
- 漕手: 6%
という事で、今回のログで着目した造波抵抗は、ローイングボート(通常の船舶に比べると圧倒的に細長い)の場合、全抵抗の5%程度の話であり、摩擦抵抗に比べると、その影響度は微々たるモノだ。しかしながら、ボートが進むときに生じる波は後ろ向きに進むローイング競技の場合は漕手から良く見えることもあり、実際の影響度以上に、心理面で漕手に与える影響が大きい様な気がする。(波を見て抵抗がどうのこうの言うのは、おやじだけかな?)まあ、我々もギリギリのところで勝負しているので、こういった微小な抵抗の差も気になるところである。
以上