Oyajisculler's blog

(おやじスカラー戸田便り)

ストレッチャーの自作

oyajisculler2008-11-23

昨日、1X荒川出艇の後に、T大Jrクルーが使用しているFilippiエイト艇の整備について相談を受けた。このFilippi艇は1995年、おやじが長崎転勤で東大コーチを辞める直前に発注した艇。FilippiのItalia-S艇で、イタリアナショナルクルー等が世界選手権の軽量級エイトで何度も金メダルを獲得したMould-F9船型。世界のトップクルーがメダル争いに使用する艇であり、T大の対校クルーが愛用して良いはずの艇。しかしながら実際にはあまり活用されないまま、今はT大Jrのセカンドクルー艇としてゾンザイな扱いを受けている。
T大OBの淡青会(LBRC)では、おやじがT大HC時に使っていた船齢15年以上の古いエイト2艇(Vespoli艇とSykes艇;LBRCが整備する前は埃を被っていた)を整備して使っている。船体自体は古くても、ストレッチャー、シート、レール、クラッチそしてオール等の漕手とのインターフェース部分の消耗品パーツは全てリプレースしているので漕ぎ心地は新艇とさして変わらない。OBクルーとしてはこれを気持ちよく使っている。そしてT大新人クルーがエイトを使いたいという時には、2艇の内、1艇をT大に戻して活用して貰うというGive & Takeの関係となっている。
さて、先日T大のJrコーチから不可思議が相談があった。即ち、LBRCが使用している安定性の良いSykes艇をT大Jrの冬場トレーニング用として使いたいので、Sykes艇と前述のFilippi艇を冬場の間、交換したいとのこと。理由はFilippi艇はバランス安定性に難があるので漕技未熟なT大Jrの冬場トレーニングには適さないとのこと。

バランス改善対策:

このFilippi艇をJrが漕ぐ姿を何度か見たことがあるが、設計体重より漕手が軽いのか全体的に艇が浮いており、漕手のシートの位置が水面より随分高い位置にある。重心が高い分、バランス安定性が悪い様に見えた。この艇は1995年の購入した艇。この当時のFilippi艇のシートがダブルアクションタイプのシートが主流。シートの下のシャシーとシングルアクションタイプに交換することでシートの座面は10〜15mm程度下がる。船齢が10年以上経った艇で既にシャシーが経たっているので、バランス安定性改善との絡みも含めてシャシーをシングルアクションシートに交換する様にアドバイスした。
その結果、少しバランス安定性が改善したが、未だ十分ではないとの報告あり。現在装着されているフィンがEmpacher艇に比べると小さめであるとの話もあり、昨日は艇全体を観察した。その結果、ストレッチャーに相当ガタが来ており、まともに漕げる状態ではなくなっていることが分かった。

ストレッチャーシステムをEmpacherタイプに更新:

最近のFilippi艇は、ストレッチャーシステムがEmapacher艇と同じシンプルなシステムになっている。しかし10年以上前に建造されてFilippi艇のシステムはFilippi独自の複雑なシステムとなっていた。1995年に建造された本エイト艇は当然ながら旧式のストレッチャーシステム。昔のFilippi艇は、ストレッチャーが全体的に低めに設定されていた。足の短い日本人漕手は相対的にHeel Depthを浅めに設定する傾向がある。この旧式FilippiストレッチャーでHeel Depthを上げようとすると、当初の設計思想と異なる設定となるため、強度面で種々問題が発生する。妙な設定で使いこむとストレッチャーシステムがボロボロになるという悪循環になる。本艇も御他聞に洩れず惨憺たる状況になっている。下記は旧式Filippiストレッチャーシステムのパーツ。このパーツだけ見ても全体像は分からぬが、参考までに添付する。:

このままでは、どうしようもない。今後の事も勘案し、ストレッチャーシステムを互換性のあるEmpacherシステム(下図)に換装することをアドバイスした。

要点をかいつまんで言うと、先ずストレッチャー横バーをアルミパイプに変更、そしてストレッチャーボードを一般的な幅広型に変更する。下図はEmpacherのストレッチャーボード。Empacherのボードは強度を確保しつつ軽量化する工夫が施されている。技術者としての拘りの逸品、素晴らしい。

今回はT大の学生がボードから切り出して自作するので、上記Empacher社の木工職人技は困難。下図の様に汎用性の高いシンプルな形状(Martinoli製ストレッチャーボード)にせざるを得ないと思う。

ストレッチャーシステム自作に必要な材料:

さて、Emapcherタイプのストレッチャーを自作するために必要な材料及び専用パーツ類を購入する必要がある。アルミパイプ、ボードの合板、ボルト・ナット、ウレタンニス、工具他は日曜大工センターなどで入手可能。船体との接続部分についてはMartinoliパーツ等、ローイング専用のパーツになるので、J2ローイングセンターなどで購入する。以下、今回購入したパーツを列記する。

  1. アルミパイプ:外径25mm,肉厚1.5mmのアルミパイプ。(1mモノで700円程度。1mで2本取れる=@350円程度)
  2. ボード:板厚8.5mmの合板。(今回は300mm幅*900mm長:@500円程度、2枚切りだせる)
  3. アルミパイプのエンドキャップ:@300*2個(J2で購入)
  4. キールブラケット:@800 (J2で購入)
  5. パイプホルダー:U字型パイプクランプ @500*2個(J2で購入)
  6. ボルトナット類:靴プレート固定用*3, U字クランプ用*4個、キールブラケット用*3個(各@50程度*10, 500円程度)
  7. ボード塗装用ニス、刷毛、皿ねじ用穴あけ刃その他:4000円程度(8シートで割り、@500円程度)

以上、1シート辺りの材料費コストは@4000円程度。さて、ここからボードの切り出し、ボルト用穴あけ、ニス塗装、パイプカット、そして組立作業を行う必要がある。
おっと、一番値段が高いのがローイングシューズとシュープレート。シューズはピンキリだが、耐久性、履き心地などを勘案して最適なものを選ぶと良い。Empacher艇にはAdidas製の靴が標準装備されているが、Adidas靴は幅が狭い。おやじの足は幅広なのでAdidas靴が全く苦手。おやじはメッシュ素材で幅が良く広がるMartinoli製の青い靴が好きだ。

早速材料を購入。ボードにニスの下塗り:

上記材料の内、アルミパイプ、合板、そして塗装用品一式を日曜大工センター(ロイヤルホームセンター)で購入。(合計9300円程度)
ボードはニスで確り耐水加工・強度アップする必要あり。先ずは、おやじの自宅でニス(ウレタンニス)で下塗りをした。後は学生諸君はボードの切り出し等の加工を行う予定。最近の学生は中学校時代に技術家庭の教育を確り学習していない模様。木工等、大丈夫だろうか?手取り足取り教えて上げる必要がありそうだが。。。




以上