Oyajisculler's blog

(おやじスカラー戸田便り)

オールのリギングについて

oyajisculler2007-02-09

今週に入って、2人の方からオールのリギング、即ち、梃子比やインボード長に関しておやじの考えを聞かせて欲しいという問い合わせを頂いた。オールのリギングに関しては、昨年5月23日のログにOarsportサイトに掲載されているリギングに関する解説を纏めており、おやじ自身、このOarsportのリギング値は概ね良く的を得ていると思う。
今回は、オールのリギングに関するおやじの見解を纏めたいと思う。尚、オールと一言で言っても、最近ではメーカーが複数あり、また、各々のメーカーが複数のブレードやシャフト剛性に関する選択肢があるので、ここからの最適解を求めようとしたらキリが無い。従い、今日はこれらの選択に関しては言及せず、今おやじの所属するLBRCで今年購入した下記仕様のオールをエイトで使用する場合のリギング設定に関して考察する形で考えを纏めたい。

先ずインボード長を決めよう:

昔のオールは木製ハンドルで全長のアジャストが出来なかったが、今はAdjustableハンドルのオールが主流になっており、全長可変を前提として話を進める。漕手のローイングレンジは多少個人差はあっても、大雑把に言えば身長とレンジは比例関係にある。おやじは身長174cmだが、他の者より練習頻度が多く、有効レンジの可動域も体格の割に長いので概ねクルーの平均身長(176〜178cm)と同等のレンジがある。従い、おやじの適正リギングが、当該LBRCクルーの適正リギングであると看做す。
さて、体格が決まってしまえば、その体格にあったインボード長を先ず決める。何故か?オールはクラッチを中心として水平に回転することにより推進力を発生する推進器であり、効率よく推進力を発揮するには、適正はキャッチ角及びフィニッシュ角という振り角を確保する必要がある。(キャッチ角が不足すると正確で効率の良いキャッチ動作が困難になる)クルーの体格が決まれば適性な振り角を確保し得るインボード長が決まるということだ。一般的な数値は以下の通り:

  1. ナショナルクルーレベル:キャッチ角55度、フィニッシュ角35度、合計90度。
  2. クラブクルーレベル:キャッチ角50度、フィニッシュ角30度、合計80度。
  3. 大学クルーレベル:上記の中間で、キャッチ角55度、フィニッシュ角30度、合計85度程度か?

LBRCエイトは中年漕手クルーなので、上記の合計80度程度の振り角を確保し得るインボード長とすべきと考える。おやじの学生時代のインボード長は112cm〜112.5cm程度だったと記憶している。日々乗艇練習して贅肉など無かったので上記の85度は確保出来ていたと思う。これはOarsportリギングと概ね合致している。さて、現在の設定はリガースプレッド83cm, インボード長113.5cmとしているが、おやじが漕いで80度の振り角をやっと確保できる状況。もしかすると、あと1cm程度インボードを短くして大学時代の様に112.5cm程度が良いのかも知れない。今のところは現状の113.5cm暫く様子を見たい。

アウトボード長:

クルーの体格に合ったインボード・リガースプレッドが決まってしまえば、後はアウトボードの長さを決めることになる。アウトボードの長さとは、エルゴで言えば負荷、即ち、Drag Factorと同じものと考えれば良い。アウトボードを短くすれば、水中が軽くなり、楽にスイスイオールが引けるが、思った様に艇速が出ない。また、逆にアウトボードを長くすれば、水中が重くなり、ハンドルを引く重さがグーっと重くなるが、押切ることが出来れば1本で艇がスーッと出て艇速が伸ばすことが出来る。要するに自転車のギアと同じことだ。2000mと言う決まった距離を最短の時間で漕ぎきるには、どのギア、即ち、アウトボード長を選ぶべきかという選択になる訳である。自転車のギアの場合はその場の操作で簡単にギアを変更できるが、オールの場合はこれが困難なので、1出艇毎にアウトボード長を変えて試して見るしかない。インボードしか変更できないがC2のC.L.A.M.を使ってアウトボード長を調整してみるのも一つの手だ。(米国では良く使われている模様。逆風対策に有効かもしれない)
現在、LBRCではオールの全長を最短の370cmに設定しているので、アウトボード長は370cm-113.5cm=256.5cmということになる。(実際にはクラッチの厚みがあるので、本質アウトボード長は2cm程度短くなるが、面倒なので詳細は割愛する)
これまでこのリギングで2回乗艇したが、水中が重すぎて引き切れないという感触は無いので、インボードの項で書いた通り、機会を見てツバの位置を変更して、インボードを1cm短くしてアウトボード長を1cm伸ばした重めのギア比を何れ試してみようと思う。
何れにせよ、引ききれる範囲でアウトボード長は長めにした方がオールの推進効率は良くなる。これは自転車の場合、耐えられる範囲で重めのギアに設定して方が速く走れるのと同じことだと考えれば良い。

新人漕手は短めのオールを使わせるべきでは?:

大学ボート部では、新人漕手はお古のオールを使って乗艇練習する訳だが、この時に対校選手が使っていたオールをそのまま使われているケースが多いと思う。インボード長についても対校選手と同じ設定にするとどうなるか?結局、非力な新人漕手がイキナリ対校選手並みの長いアウトボード、重いギア比で漕ぐことになる。まあ、新人コーチが辛抱強く指導すれば間違いは無いのだろう。しかし、小賢く非力な新人は、ブレードを浅くすることで重い負荷を逃げようとしやすい。というより、実際、殆どの新人がそうなっている様に見える。勿論、技術的に未熟だからブレード一枚キープできないということもある。しかしやはり、アウトボードが長すぎて引き切れないのでどうしても浅くして重い負荷から逃げてしまうというのが体力の無い新人の性だ。このブレードを浅くして水中負荷から逃げる癖が染み付いてしまうと、後々修正が効かず、対校選手になった時に正確で効率の良いブレードワークが中々身につかないという悪循環に結び付く。こういう意味では新人には短めのオールで、水中の負荷を軽くし、ブレード一枚を確りキープしやすい状態で初期導入練習をするのが適当であると思う。如何だろうか?

マスターズ選手も体力・レンジに応じた短めのオールを使おう:

LBRCエイトでは上記の通り、370cmという短いオールを使っている。理由は上記の通りだが中年以上のマスターズ漕手として留意すべき事項を列記する。

  1. 中年肥りで腹回りが肥ってきて、フィニッシュ有効レンジが短くなる。
  2. 加齢と共に柔軟性が退化し、ローイングレンジが短くなる。
  3. 加齢と共に漕力が落ちる。

ということで、レンジが短くなれば、適度な振り角を確保するための適性なインボード長は自ずと短くなってゆく。また、漕力が落ちれば重い付加には耐えられなくなるので適正アウトボード長は自ずと短くなる。また、中年漕手ともなれば漕暦が長いのでブレードを水中に固定する技量が改善する。同じアウトボード長せもブレードスリップが小さくなれば、有効レンジが伸びる。これはアウトボードが長くなるのと等価であり、高い技量を持ったクルーは同じ漕力なら適正はアウトボード長は短めとなるとも言える。この意味でマスターズクルーは大学クルーより短いオールを使った方が良さそうである。
以上