Oyajisculler's blog

(おやじスカラー戸田便り)

Rowing中のオールと艇の動き

oyajisculler2006-09-14

9月4日のログに対して、mimoさんからコメントを貰った。「ブレードを支点としたときのクラッチ(スリーブ)の動きを解説して欲しい」というリクエストだ。
1年半程前にこのブログで木下研論文解説(その1):オールに加わる流体力 - おやじスカラー戸田便り連載解説したT大木下研究室の論文の中に右上の挿絵がある。これはRowing中のキャッチからフィニッシュに至るオールと艇の動きを示している。
図を見れば一目瞭然。ちゃんと漕げている漕手には解説するまでもないが、キャッチからフィニッシュに至る動きとその要点を述べると:

  1. ブレードエントリー(キャッチ)後、漕手の脚のドライブによりブレードファイス面に圧力が加わり、ブレードが若干スリップする。ブレードが一枚キッチリ入っていればこのスリップは小さいが、ブレードが浅いとスリップが大きくなり、オールの振り角に対して艇(=クラッチ)の前進距離が短くなる。即ち、有効レンジが短くなる。
  2. 図中にオールが5本書かれているが、キャッチを1、フィニッシュを5とすると、2〜4の間でオールと艇の為す角度は直角に近くなり、推進器であるオールは推進効率が最も良くなる。即ち、この間に強く水を押せば艇が効率よく加速するということ。一方、これはブレードが一枚キッチリ水に入っていることが前提条件であり、ブレードが一枚入っていない浅いオールでは前述の通りブレードが大きくスリップして艇の前進距離は短くなる。
  3. 理屈を理解していない未熟な漕手は、往々にしてハンドルや漕手のバックスピードばかりに気を取られて、ハンドルを速く動かすためにブレードを浅くしてしまう傾向が見られる。推進効率の観点からすれば、これは全く逆効果だ。寧ろ同じ力で水を押すのであれば、オールを確り深く入れてスリップを小さくした方が艇が良く進む。但し、ブレードを浅くした場合に比べて長い時間、重い水を押し続けなければならないので、漕手の負担は大きくなる。でも艇は良く進む。(本来、これが正しい漕ぎ方)この辺り、粘り強さとシツコサが肝要である。
  4. フィニッシュ周りでは艇とオールの為す角度が効率の良い90度から離れて行くので、オールの推進効率徐々に悪くなる。フィニッシュでの振り角(SweepではMax.35度)が大きくなり過ぎない様にリギングでフィニッシュ角を調整する訳(でも最近の漕手は逆にフィニッシュ角が小さ過ぎるかな?)であるが、ブレードを離水する辺りで幾ら強く押しても艇は効率良く進まない。押切った後はブレードで艇の走りを邪魔しない様にクリーンに離水することが必要となる。
  5. キャッチからフィニッシュまでのブレードセンターの動きが図中に破線で示されているが、この破線のキャッチからフィニッシュまでの長手方向(艇の推進方向)の戻りをスリップと言う。同じ力で漕いだ時に、このスリップが小さい漕手(泡がコンパクト)は艇を効率よく進めている漕手であり、逆に大きなスリップ(泡が浅く広がる)で漕ぐ漕手は艇を効率よく進めることが出来ない漕手ということになる。
  6. 理屈を解説すると上記の通りとなるが、要するに、キャッチからフィニッシュの離水直前までブレード一枚確り水に入れて、美しく滑らかでピークの高い、丸々と肥ったForceカーブで漕ぐことが出来れば、艇はスムーズに加速してゆく。漕手はそれが出来たときの感触や艇の走りを感じ取り、毎ストロークそれが実現できる様に、執拗に練習する。そして良い漕ぎを体に憶え込ませる必要がある。それが乗艇練習の基本である。

今から冬場に入るが、上記の基本を頭に良く叩き込んで、基本が実現できる様にひたすら漕ぎ続けた漕手・クルーが来年のレースで花開かせることが出来るというもの。
以上