5月末に講演した「エイトを速く進めるには」の中で、ギャザーの話と併せて、艇速の速いエイトではストロークポイントをストロークの前半に持ってくるべきだと述べた。これに対して、何人かの聴講者の方から、良く分からないとうコメントを頂いたので、ストロークポイントに関するおやじの考え方をここで纏めたい。
ストロークポイントとは何か?:
まず、コメントの中でストロングポイントと言う言葉が書かれていたが、おやじが言った言葉は、ブレードが水中を押すストロークの中でのポイント、即ち、ストロークポイント(Stroke Point)であり、Strong Pointではない。ストロークポイントとは、エルゴのForceカーブで言えば、山のピークの位置のことを言う。勿論、Forceカーブは常に上に凸の美しく丸々と肥った面積の大きな形であることが前提である。このForceカーブのピーク、即ち、ストロークポイントの位置をエイトのクルー全員で確り合わせて、全員が同じForceカーブでエイトを漕ぐ事が出来れば、エイトは効率よく進むことになる。以前、エルゴのForceカーブについて纏めた図があるので、参考までに添付する。
ストロークポイントを論じる状況:
対校エイトが目標とする対校戦レースやインカレに向けてクルーの仕上げに掛かる段階で、時としてリズムのポイントが不明確になり、レートが上がらなかったり、艇速が伸び悩む時期がある。こういった時は往々にして漕手各自のForceカーブの形、即ち、ストロークポイントがバラバラになりかけていることが多い。こういう状況の時に、キャッチ(ブレードエントリー後)から脚のドライブを強調して、ストロークポイントをストロークの頭に持って行くようにして取り組むとForceカーブの形を合わせやすく、それをキッカケにクルーのリズムが良くなることが多い。良く大学エイトのコーチが、トップスピードで漕ぐエイトクルーに向けて、「キャッチから!」と言っているのを見かけると思うが、狙いはこういうところにある。
エイトでキャッチハーフのストロークポイントを強調する理由:
これは言うまでもないが、エイトのレーススピードが速いからである。シングルスカルやペアの様な小艇はフォワード中の減速が大きくキャッチ時の艇速が遅いこともあり、水中を押す時間が長いので「先ずエントリーして、ブレードが水を掴んだのを感じてから、ジワリと加速するように押す」というイメージとなる。しかし、エイトのレースペースでは、小艇より艇速が圧倒的に速いので、「ブレードが水を掴んだのを感じてからジワリと加速する様に」等と悠長に考えていると気がついたらキャッチハーフが終わっていてストロークの半分も残っておらず、確り水を押せないままフィニッシュということになってしまう。これがエイトの様な高速艇の難しさである。
これを解決するために必要なのが、以下の技術であり、その中の一つとしてストロークポイントをキャッチ直後に持って来る様にイメージしようとするものがある。尚、実際にはForceカーブのピークは膝の角度が90度付近で発生するのでキャッチ直後ではない。要は、ストロークの前半に持って来ようとクルー全員がイメージするところが重要なのである。