Oyajisculler's blog

(おやじスカラー戸田便り)

Oarsportのリギング数値とおやじの考察

oyajisculler2006-05-23

おやじがT大HCをしていた頃、丁度C2社のBig Bladeが爆発的に普及した。それまでのMaconオールとは、オール長さ等が全く異なり、標準リギングに相当するものが出回っていなかったこともあり、自分で標準リギング表を纏めた。1994年のことであり、もう12年も前の古い資料だ。その後、SmoothieオールやCrokerのSlickオールが普及してきたこと、それとオールの全長がAdjustableとなったこと等あり、今ではやや陳腐化している感あり。おやじ自信も最近では、この標準リギング表ではなく、英Oarsportサイトに掲載されている漕手の身長に応じたリギング数値を参考にしている。ここではこのOarsportのリギング数値表の紹介すると共に、関連するおやじの考えを纏めたい。

エルゴの2000m記録に応じたブレードサイズ:

Oarsportリギング表では、エルゴ2000m漕の記録に応じてブレードサイズを規定している。6'16"以下で漕げる重量級のエリート漕手はBig Blade等のOriginalサイズでOKだが、例えば、6'32"〜6'56"の漕力ではブレード長を2cmカットすべきと書かれている。しかしながら、ブレードを一度カットしてしまうと元には戻らないので、この手法はおやじは推奨しない。むしろ、ブレードサイズを小さくするより、オール長を短くした方が良いと思う。Fat Smoothieオールはブレードを大きくして全長を短くしているのだから、同じように考えれば良い訳だ。

身長に応じたオール全長とオーバーラップ:

Oarsportリギング表では漕手の身長に応じた標準のオール長とオーバーラップ値を掲載している。これまで、漕手の身長に応じてオールの長さをアジャストするリギング表は無かったので、これは良いアイデアだ。特に身長の低い小柄な漕手にとっては喉から手が出るほど欲しい情報だろう。尚、オーバーラップ記載値はインボード長にOarlockの厚み2cmを加算した値が表記されているので、日本で馴染みの単純計算によるものと定義が異なる。特にスカルについてはインボード長を2倍したものからスパンを控除した単純計算より4cmも大きく表記されているので分かり難いと思う。従い、ここではSweepのオーバーラップは単純計算値、スカルのオーバーラップは先日のログで紹介したおやじ定義の実オーバーラップ値で纏めてみた。

Scullオーバーラップ値を見ると、従来日本で推奨されてきた18cmに対して、身長170以下の小柄な漕手では14〜15cmと小さめの値となっている。実際、世界選手権の写真などでチェックしてみても海外のスカラーは日本の選手に比べて小さめのオーバーラップで漕いでいる。この辺り、日本の小柄な選手は、18cmに拘らず、体格に応じてオーバーラップを小さめにした方が良いということだろう。

身長に応じたリガースパン及びインボード長:

Oarsportリギング表の数値は以下の通り。Scullは概ね国内でも馴染みの数値。Sweepについては、国内で一般的に設定されているリガースプレッドやインボード長より小さめかも知れない。でも、おやじが現役選手の頃は概ねこの数値付近で設定していた。最近の国内選手は軽めの梃子比を志向している様だが、スパンやインボード長を大きくすると、軽くなる反面、Rowing Arcが小さくなったり、艇速に対して体の動かす速度を速くする必要がある等、効率が悪くなるということも忘れてはならない。世界選手権の重量級エイトの映像を見ると、インボードを一番短く設定している様に見える。この辺り、日本のクルーもRowing Arcを大きく取ることに拠る推進効率の改善にも着眼する必要がありそうだ。


インボード長は、オールのインボードを単純に計測した値に置きなおしたもの。

Scullに於ける左右のワークハイト差とリガースパンの中心調整:

良く一般的に言われているのは、シングルスカルで5〜15mm、チームボートで7〜20mmという事だが、おやじが思うにシングルスカルでも20mm以上差を付けた方が漕ぎ易いと思う。左右差が小さいとハンドルがクロスオーバーする際、どうしても手が当たったり、艇をローリングせざるを得ないので、20〜25mm程度左右のハイト差を付けた方が良いと思う。
また、先日のログで紹介したが、クロスオーバー時に少し艇をストロークサイドの方に傾斜せざるを得ないので、この傾斜によりスパンの中心がストロークサイド側に4mm〜5mm程度ずれることになる。このためB-side側のハンドルが少し余計にオーバーラップした様な感じになるので、これが気になる漕手は、予めスパンの中心を5mm程度B-side側へシフトしておくと良い。おやじはこの様に調整したところ漕ぎやすくなった。

SweepのRowing Arc(振り角)とストレッチャー位置:

一般的に世界クラスのエリート選手が漕ぐときのRowing Arcは、Catch/Finishの振り角で、Sweep:55度/35度(合計90度)と言われている。(Scullではもっと大きく110度)一方、これは身長190cm以上ある大男のRowing Arcであり、身長180cm程度の日本人漕手ではここまで大きく漕げない。合計の角度でせいぜい85度程度か?最近、チョッパーオールに変わった影響か、Finish角を浅めにする漕ぎが主流でもあり、身長180cmクラスの日本人漕手のRowing Arcは、Catch/Finishの角度で55度/30度程度が適当ではないかと考える。おやじのLBRC中年エイトではCatch/Finishを50度/30度にマーキングして、レースレート時にこの角度を下回らぬ様に漕いでいる。身長174cmのおやじは、レースレートでは51度/30度が事実上の限界かと思う。
このCatch/Finish角を取るための目安として、ストレッチャー位置はPin To Heelの数値にて、PTH= 35cm + (身長-180cm)÷2で設定すると、概ね合う様だ。
尚、Scullの場合は上記のSweepの位置より2cm程度PTH値が小さく、PTH = 33cm + (身長-180cm)÷2にすると丁度良い様な気がする。まあ、これも一概に身長で決まるものではないので、上記PTH算式はあくまで一つの目安であり、実際のRowing Arcの方で合わせるべきである。

ストレッチャー高さとボード傾斜:

ストレッチャーの高さは、シート面からローイングシューズの踵の一番低いところまでを計り、これをHeel Depthと称す。脚の長い者は低めに、短い者は高めに設定し、自分が漕ぎ易い高さとすれば良い。身長175cm程度の漕手であれば15cm程度に設定しておけば概ね問題ないだろう。
ボードの傾斜は42度が基準。39度〜45度までは許容範囲なので、漕手の踵の硬さに応じて、漕ぎ易い様に調整する。

クラッチの軸(ピン)の角度設定:

エリート漕手の場合は前傾0度、外傾0度が標準値。一方、大学生漕手の場合は未だ十分な技量が無いので外傾1〜2度程度を付けた方が漕ぎ易いと思う。ブレードワークが上達して外傾が邪魔するようになってきたら、外傾を0度にすれば良い。

クラッチブッシュの角度:

ワークハイトの設定にもよるが、Big Bladeの場合は4〜5度。Smoothieは少し浮きやすいので4度程度で良いと思う。何れにせよ、実際に漕いでみて漕ぎ易い様に調整すれば良い。但し、自分の漕ぎの未熟さをブッシュ角で誤魔化す様なことが無い様にすること。

以上