Oyajisculler's blog

(おやじスカラー戸田便り)

大学ボート部の年次とグルーピング:

ここでは大学入学後にボート競技を始める選手の多いクラブを対象として、年次と選手グルーピングの一例を紹介する。

  1. 1年目(新人):入部から秋までを新人と呼ぶ。入部したての1ヶ月程度はリハビリトレーニングで、受験勉強で鈍った体を慣らし運転する。7月〜8月上旬の約1ケ月間をナックル艇や付きクウォード艇で新人部内レース等に向けて合宿期間とする。夏休み明けの9月中旬〜10月中旬までの期間は秋の新人部内レースに向けて合宿期間とし、エイトの2000mレースに向けて練習すると良い。ひ弱な新人ではあるが、将来の2000m本格レースに向けて部内レースは2000mレースで実施すべきである。部内レースの良いところは、一緒にボートを始めた仲間と競い会うことが出来ることと、必ず何れかのクルーが優勝を経験できる点にある。新人部員数が少なく部内レースが出来ないクラブについては、新人戦など公式レースに出場する手もある。部内レース後、上級生とクルーを組み遠漕を実施すれば漕法伝承に繋がると同時に、部内の一体感醸成となる。片道約200kmの行程(荒川〜江戸川〜利根川)を3,4日で漕破する大利根遠漕は、この意味で良い練習だ。一日平均50km以上の距離を数日間交替無しで漕破するものであり、新人も、これを漕ぎ通せば距離に対する恐怖感を払拭でき、その後の厳しい練習に耐えられるというものだ。
  2. 2年目(ジュニア、例外的に優秀な選手は対校選手へ):12月頃からは新人ではなく、ジュニア(対校予備軍)としてエイト等シェル艇での乗艇練習を開始する。また、1年生の中で体力・体格に秀でた者は、ジュニアを飛び越して対校選手と合流して、フォア以下の小艇を使って合宿練習に参加すると良い。おやじも大学1年の冬に対校1Xに抜擢され、凍るような冬場の中、1Xの乗艇練習に邁進した。シーズンに入ると、通常のジュニアは対校戦ジュニアエイトレースに向けて練習する。おやじは大学2年生のシーズンは、主に1Xレースに出場させて貰った。1Xによるレースに向けた練習や勝つためのレース戦術等、この時の経験が後の対校エイト整調として非常に役にたった。2年生は10月上旬に全日本新人選手権があり、これが終わるとジュニア終了となる。
  3. 3年目(対校選手):新人戦が終わると、対校選手として選手生活を継続するか、そこで選手を諦めて新人トレーナーやマネージャー等、クラブをサポートする側に廻るかの判断をする。(エイトで勝つためにはマネージャーの力が欠かせない)選手としてトレーニングの継続を選択した者が対校選手ということになる。その後は、遠漕会等や、冬場の小艇トレーニングを経て、漕技の改善や体作りをしてゆく。シーズン入り後は4年生の対校選手と共に対校戦レースに臨むことになる。
  4. 4年目(上級生対校選手):8月のインカレレースが終わると、最上級生対校選手となる。9月〜10月に掛けてはレースもなく、年明けのシーズンに向けて新体制で準備をする期間だ。自分たちの代の漕法のポイントや目標設定について慎重に準備してゆく。10月の新人戦後、新対校選手と合流し、フォアによる冬場のトレーニング準備を開始。大利根遠漕を終えるて、漸く新年度の対校合宿スタートとなる。シーズンに入れば、後は決めた目標の達成に向けてひたすら練習に打ち込むのみ。後戻りせず、レベルの高い練習を繰り返し実行できたクルーが最後に目標を達成することが出来る。

対校選手の年間トレーニング(おやじが大学4年次の例):

3年次のインカレエイト終了から始まり、翌年のインカレ決勝に至るまでのスケジュールは次のようなものとなる。

  1. 8月下旬:インカレ決勝終了
  2. 8月下旬〜9月上旬:休息期間(長い休みが取れるのはこの時期だけ)
  3. 9月中旬〜10月上旬:合宿入り。新年度体制の方針やスケジュール検討。この間、3年生選手だけで乗艇練習。
  4. 10月中旬:2年生の新対校選手と合流。冬場のフォアトレーニングに向け準備開始。新対校選手に漕法の要点を指南し、新年度の漕法統一を図る。
  5. 11月上旬:遠漕実施。新人3,4名とナックルシックスで遠漕を漕ぎ、クラブの縦の繋がりを深め、一体感を醸成する。
  6. 11月中旬〜12月:対校合宿本格スタート。付きフォアによる乗艇トレーニングの開始。(COXが不足する分は、先輩COX、マネ、中途退部のCOXに応援依頼する)平日早朝は乗艇若しくはランニング。午後はウェイトトレーニングまたはエルゴトレーニング。土日は荒川に4出艇。主にロング漕によるブレードワーク改善、及び、漕法の統一化を図る。体力面ではウェイトによる筋力増強とランニングによる心肺機能向上を狙う。
  7. 12月末:年末最終の土日にハードな遠漕メニューを4回行い、エネルギーの尽きるまで漕ぎ込む。ロング漕だけでなく、SR30以上の短漕も織り込む。
  8. 1月上旬:約1週間の陸トレ合宿。1日3モーションの陸トレで徹底的に走り込む。
  9. 1月中旬〜2月上旬:フォアトレーニング再開。土日に徹底的に並べて漕ぎ込む。引続き漕法伝承及び統一化の取組。
  10. 2月上旬〜中旬:フォアによるシートレース。クルー選考に加えて、厳しい競争環境の中で力を出し切るトレーニングの一環で実施。
  11. 2月下旬〜3月上旬:エイト2杯の編成。イーブンクルーとし、土日に並漕して練習し、エイトに適した漕手の発掘。
  12. 3月中旬:#1エイト、#2エイトの2杯編成。並べて練習。#2エイトにもチャンスを与える。
  13. 3月下旬:対校エイトクルーの正式決定。新年度対校エイトのスタート。
  14. 4月上旬〜中旬:強豪大学クルーとの合同練習。徹底的に並べる。レース環境でのシミュレーション及び自己の艇速レベルの確認。
  15. 5月上旬:対校戦レース。シーズンの緒戦。取組んできたことを発揮する機会。
  16. 5月下旬〜6月下旬:対校エイトクルーの編成見直し。軽量級選手権等レース出漕。レースシーズンの中、徐々に完成度レベルを上げて行く。
  17. 7月上旬〜中旬:インカレエイトクルーの選考・編成見直し。最終決戦に向けて最強クルーの編成。
  18. 8月上旬〜中旬:避暑合宿で徹底的に漕ぎ込む。疲労困憊した状態から更にもう一頑張り出来るようなハードなトレーニング。
  19. 8月中旬〜下旬:戸田に戻り、インカレに向けて最後の仕上げ。MAX Speedのアップ等
  20. 8月下旬:インカレ決勝レース。

年間トレーニングでの要点:

  1. 秋から冬場が低レートのロング漕を主体的に行う時期。しかしながら、シーズンに入っても週に何回かはロング漕主体の出艇を継続する必要あり。
  2. 冬場は低レートロング漕を主体にするが、併せて出艇中の中盤でカンフル材のようなイメージでハイレートの短漕も織り込むとロング漕のレベルが向上しやすい。
  3. 乗艇だけでは心肺機能が向上しないので、冬場や春先の強風が吹く時期はランニング主体の練習を行うことも必要。
  4. 筋力不十分な新対校選手にはシーズンに入ってもウェイトトレーニングを継続させる必要がありそう。
  5. レースシーズンには、2000m走など中距離走を積極的に取り入れて心肺系の機能向上に取組む。
  6. シーズン中は、クラブ内の#2エイトと並べたり、強豪クルーに並漕練習を申し込み、クルーの艇速状況をチェックする必要あり。
  7. シーズン中の毎出艇のウォームアップは、レースUPと同じメニューとした方が、実際のレースで普段の力を出しやすくする。
  8. 出艇前にメニュー及びその狙いをクルー内に周知し、目的を共有する。
  9. 出艇中は常に集中力を維持し、無意味な出艇が生じない様に良く管理すること。
  10. 乗艇練習を介して、自クルーの限界に挑み、自クルーの力を良く把握しておくこと。そして如何なる状況でも持てる力を100%出し切れるようにする。
  11. MAXスピード、コンスタント、ラストスパート、ミドルスパート、エンヂュランス等、バランス良く取組み、弱みをなくすこと。

冬場の小艇トレーニングの目的と使用艇について:

下記を目的として冬場に小艇トレーニングをするクラブが多い。

  1. 冬場に重い水を確り押し、漕力を養う。
  2. 水を押した分だけ艇速が増すという因果関係を体感し、漕力を増強する必要性を知る。
  3. バランスに敏感な艇に乗り、自らの動きと艇のバランスの相関関係を体感する。
  4. 少人数に分解することで、整調を漕ぐ機会が増え、整調としての育成及び人材発掘に繋がる。

小艇トレーニングに利用される艇種とその長所・短所:

  1. シングルスカル:相棒なしで1人で練習できるところが良い。また、並漕やTTで個人単位で漕力も計れる。一方で初級者がキチンと漕げる様になるまで長い練習期間が必要であり、1ヶ月以下の短期間小艇練習には向かない。また、エイトのSweep漕ぎの改善には直結しない。
  2. 無しペア:Sweep種目として最小単位であり効果的。但し、未熟な漕手には操舵は難しい。サイドに1名ずつなので初級者への技術伝承には向かない。
  3. 付きペア:余り普及していない艇であること、また、漕手2名に対してCOX1名必要であり現実的ではない。
  4. 無しフォア:スピード感覚がエイト並みであり、重い水を確り押すという意味では適当でない。また、安全上の問題もあり、冬場に要求される川でのロングには不向き。
  5. 付きフォア:エイトより相対的に水中が重く、また、バランスも敏感である。また、整調ペアにベテラン、Bowペアに新米漕手を乗せれば技術及び漕法の伝承になる。COX付きなので川でロング漕可能であるのと、COXのトレーニングになる。

以上、エイトへの繋がりを勘案すると冬場の小艇トレーニングは付きフォアが最適というのがおやじの自論だ。尚、冬場に付きフォアを使う場合には、出来ればStern COX席の付きフォアを選びたい。理由は、①整調とCOXの連携、②COXが拡声器無しでコールできる(発声練習)、③COXの防寒及び安全対策。クラブにStern COXフォア艇が無ければ規格艇を借りて使えば良い。

クラブ内でのエイト2杯体制について:

クラブの選手層が厚くなれば、チャンピオンエイトとセカンドエイトの2杯体制としたい。(フォア等、小艇をある程度諦めることになるが、エイト主体のクラブとの割り切りが必要。米国の大学ボート部は殆どエイトのみ)週末の乗艇練習で2杯で徹底的に並べることが出来、練習の強度が向上する。東大が全日本選手権エイト四連覇の時は対校エイト2杯体制としていた。2杯体制とすれば、チャンエイト強化の為のクルー選考にも好都合となる。
以上