Oyajisculler's blog

(おやじスカラー戸田便り)

バックステーの詳細と調整要領

oyajisculler2005-10-03

特殊なリガーを除くと、最近のリガーには必ずバックステーが付いている。おやじの属するLBRCではVespoli艇を使っていおり、リギング調整の毎にバックステーの伸縮・調整方法を説明している。何故かというと、伸縮調整方法を知らない者、若しくは間違った方法でやってしまう者が多いからだ。また、母校の艇を時々観察すると、所謂Empacherタイプのバックステーで可笑しなことになっているものを見かける。この際、忘れぬ内にバックステーの役割と伸縮調整方法について纏める。

バックステーの役割:

その名の示すとおり、stay=支えである。何を支えているかと言えば、リガー本体から伸びているクラッチ軸の頭を支えている。漕手がオールで水中をストロークしている間、クラッチ軸はオールの推進力を受けて、概ね進行方向へ曲げようとする曲げモーメントが加わる。これを支えるのがバックステー。バックステーにはストローク中、圧縮力が加わる。従って、バックステーは圧縮力が加わっても長さが縮まない様に伸縮部を確り固定する必要がある。固定していないバックステーは無用の長物である。(残念ながら、伸縮部を固定していないバックステーを時折見かける)

バックステーのダメージ:

普通に漕いでいる分には、如何なる漕手がどんなに強く漕いでも正しく取り付けられたバックステーが壊れることはない。しかし、エイト等の大型の艇で腹切りをしてオールを離し、オールがバックステーに引っ掛かると一発でバックステーは曲がってしまう。後述のVespoliタイプのバックステーならクラッチ後方のパイプが曲がるだけで、伸縮部の損傷は殆どない。この場合、ゴムハンマーか何かで曲がった部分を叩けば概ね元に戻る。(何度もやれば、当然折れる)一方、Empacherタイプの場合は、折れ曲がる部分が伸縮部なので、曲がったらそのバックステーはお釈迦となるケースが多い。

バックステーの2種類:


バックステーは大きく分類すると上図の2種類となる。1.ネジ伸縮タイプ(Vespoli等)と2.ホースクランプで固定するEmpacherタイプ。当然ながら、何れのタイプも頭の部分がサイド別なので、購入するときはS-sideかB-sideかをよく見て購入する必要あり。各々の伸縮調整法の要点は以下の通り。

ネジ伸縮タイプ:

これは、Vespoli等の米国艇や中国艇に多いタイプ。(最近のカーボンパイプリガーもこのタイプ)交換する場合は、長さの合うものを購入する。リガースプレッドの変更作業に於ける作業要点は以下の通り:

  1. バックステーは、外す前に伸縮部固定ナット(D)を緩める。伸縮部のネジは逆ネジになっているので、ネジを良く見てナットを回すこと。(外してから固定ナットを緩めるのは結構大変な作業。)
  2. スパン調整やハイト調整を完了したら、最後にバックステーを付ける。この際、伸縮は伸縮ボルト(C)を回して伸び縮みさせること。素人がよくやる間違いはステーパイプ(A)を回して伸縮させること。これだと1回点≒2mmピッチでしか調整できず、微妙な長さ調整が出来ない。
  3. バックステーの長さ調整が出来たら、固定ナット(D)を仮止めする。+バックステーをクラッチ軸の頭と艇体の2箇所で固定する。最後に固定ナット(D)を確り固定する。

ホースクランプで固定するタイプ(Empacherタイプ):

このタイプは、ステーパイプ(B)が長いままで売られており、長さはリガーに合わせて自分でカットして使用する。このタイプについては、長さをカットする作業から纏める。

  1. カットする前のバックステーをリガーに仮付けし、カットすべき位置をパイプにマーキングする。
  2. マーキングした部位を金ノコ等を使って切断する。
  3. 切断した部分に金ノコで上図に示す切り込み(5〜6cm程度)を入れる。(この切り込みが無いと幾らクランプで締めても固定できない)
  4. 上記2,3の加工を施したバックステーをリガーに仮付けする。
  5. パイプ切り込み部を締め付けるホースクランプ(C)を締め付ける。
  6. バックステーをクラッチ軸の頭と艇体の2箇所で固定する。
  7. 最後に伸縮部の滑り止めであるホースクランプ(D)部をステーパイプの端面に寄せてクランプを締め付ける。

新規取替え時以外の時は、上記工程の4.項以降を行う。尚、良く見かける間違いは、上記工程の3.項の切り込みを切り忘れることである。これを施工しなかったり、確り固定していないと、パイプの中で伸縮部が暴れて磨耗して使い物にならなくなる結末が待っている。
以上