Oyajisculler's blog

(おやじスカラー戸田便り)

オールの材質:

  1. 木製:オールの材質は、国内においては1980年(おやじが大学2年生)までは、木製であった。ブレードも木製であり、ブイを強く叩いたり、チャンバラなどしよものなら、一発でブレードが割れた。従って、部員はオールの扱いが非常に丁寧であったことを記憶している。また、木製であるので、一本一本オールの重量や硬さにバラつきがあり、且つ、シャフトが使って行く内に捩れて来たりして、定期的にブレードピッチをチェックする必要があった。また、古くなるとシャフトがヘタって来るので、新人クルーは水中の強い引きでオールが折れることがあり、乗艇練習でオールを漕ぎ折った漕手は正に英雄扱いであった。国内ではConcept2社のカーボンオールが登場してから、1985年頃には全日本等メジャーな大会から木製オールは姿を消してしまったが、欧米のクルーは1990年代でも一部のクルーで使われており、バルセロナ五輪で銀メダルを取ったノルウェーの4Xクルーが木製オールを使用していた。
  2. 木製シャフトにカーボンFRP補強したオール:1981年に東大がConcept2社のカーボンオールを本格的に使用するまで、国内の最先端オールと言えば、東北大学の「ブラックシャフト」であった。このブラックシャフトオールは、細く削った木製オールのシャフトにカーボンクロスを巻きつけたもので、長さが通常の木製オールより長く、且つ、良く撓った。何より、ゴルフのカーボンシャフトが流行り始めた時と合致し、最先端のオールということで、戸田コースの各大学クルーから羨望の眼差しを浴びていた。予断だが、おやじが卒業後この東北大のカーボンシャフトオールを漕ぐ機会があったが、感触は一言で言うと、期待はずれで木製オールより寧ろ重く、バランスは安定するものの、重くてレートを上げるのが大変であった。また、不自然なほど、シャフトが柔らかく、良くしなるオールであった。尚、木製オールの補強としてカーボン繊維をテープ状に貼り付けたオールは、1980年代にC2社のカーボンオールが国内全体に行き渡るまで暫く使用されていた。
  3. カーボンFRPオール(Concept2製):今でこそ、ボートで使用されるオールは殆ど全てカーボンFRPのオールになったが、おやじが大学2年生(1980年)の時までは木製オールの時代だった。東大の軽量級エイトが世界選手権に出場した際、米国クルーからConcept2社のFRPオールを2本買取り、国内に持ち帰ってきた。このオールを皆で試漕したのだが、その軽さ、捩れの少なさ、エントリー・フィニッシュでの水切れの良さに感激した。これがきっかけとなり、翌年の1981年に東大がC2社からこのカーボンFRPオールを20本(だったかな?)購入し、国内で初めて本格的に使用した。この年、東大が全日本エイトで3連覇(翌年4連覇)したので、翌年このC2社のオールが一気に国内に出回った。当時のC2社のオールは100%カーボンではなく、カーボン繊維の心材をガラス繊維で巻いた外見濃い鼠色のシャフトだった。(現在、OriginalStandardと呼ばれている少し重めのシャフト)1990年以降レースで使われているオールは100%カーボン繊維のUltralightと言われているもので、更に軽量化されており、ハイレートのローイングが楽に出来る様に改善されている。
  4. その他の材質他:現在、国内で一般的になっている100%カーボン(Ultralight)以外にドイツのEmpacher製のオールは一部黄色いケブラー繊維を斜交い方向に編みこんでいるものがある。国産としては桑野造船がエキスパートオールと称してシャフトの空気抵抗を低減することを狙い、断面積が小さい(要するに細い)シャフトのオールを開発している。(おやじはこのオールの捻り剛性とその効果に疑問を持っている)尚、材質の話ではないが、以前このログにも記載したがC2社のUltralightシャフトは経年変化として、S-sideのブレードピッチが増加、B-sideのピッチが減少する変形(要するに一方向の捩れ)現象が生ずる。以前の少し重めのStandardシャフトでは殆ど変形が発生しなかったが、軽量化を狙いシャフトのカーボンFRPの厚さを薄くしたために発生した問題であると思っている。尚、製造工程の異なる豪州Croker社のS2シャフトは変形が殆どないという情報がある。

ブレード形状:

  1. 木製オールの時代:1980年までは木製オールが主体であった。木製オールは各大学ボート部がクラブで設計した特注仕様のモノを1本1本造船所(デルタや桑野)の手作りしていた。東大も含めて通常のマコン型オールを注文するクラブが殆どであったが、クラブによっては、一目で分かる様な特殊なブレードを使っているクラブがあった。例えば、筑波大学のキャッチハーフでの推進力向上を狙ったブレード先端が異様に反り上がったブレード(耳掻きオールと呼ばれていた)や、同志社大学のハイピッチ漕法(コンスタントレート40)を可能にするための極端に小さいブレード(但し、オールの全長は10cm程度長かった)等。文献によれば、チョッパー型の非対称ブレードを考案・製作したのは日本が最初だという話である。
  2. スタンダード型:マコンブレードが一般的になる前は、シャフトの先端の方が少し幅が広がっただけの様な細長いブレードが主体であり、これはStandardオールと呼ばれていた。おやじが大学1年生の頃は新人の試乗会にこの古いオールが使用されていた。ブレードの幅が狭い分、水中でのブレードのスリップが大きく、このオールを使ってハイレートで漕いでいたとのことである。
  3. マコン型:1992年のバルセロナオリンピックでチョッパーブレードが一般化する前は20年近くの間、このマコン型のブレードが一般的であった。マコン型は今でも各大学艇庫の奥の方に置いてあると思うが、やや丸みをおびた左右対称型のブレードである。慶応大学の選手は冬場のトレーニングに今でもマコンオールを使用している模様。
  4. チョッパー型:前項でも触れたが、バルセロナ以降、C2社製のチョッパーオールが一気に世界に普及し、今やチョッパーオールがブレードの基本形となりつつある。このチョッパーオールの狙いは、従来のマコンオールの課題であったキャッチでのブレード固定技術の難しさ、及びフィニッシュハーフでの水の掴みを未熟な漕手でも容易に改善できる様にブレードの下半分の面積を大きくし、且つ、ブレード全体の面積をマコン型より大きくすることで、水中のスリップを小さく出来る様にしたものである。このオールの効果は、ブレードワークの上手い熟練漕手では差が余りでないが、新人やブレードワークの未熟な漕手が使うとタイムが顕著に改善されるとの報告がなされている。
  5. チョッパー型ブレードの種類:C2社のチョッパー型オールは3種類あり。①最初のチョッパー型であるBigBlade(Sweepは55cmと52cmの2種類あり)、②ブレードフェース面にリブが無くノッペリしているSmoothie型(ブレードピッチの計測方法が特殊)、③Smoothieブレードの先端にVoltex Edgeというプラスチック板を貼り付け、且つ、上下の角を丸めたVltex加工のブレード。これ以外に最近急速に普及しつつあるのが豪州Croker社のチョッパーオール。国内で使われているのはSlickブレードと呼ばれているもので、C2のSmoothieに似ているブレード。これはシャフトとブレードの接着部の構造が特殊で、ブレードが一枚の深さに決まった時にそれ以上深く潜らない様に浮力調整されているとのこと。Sweepオールについては、国内で使用されているものは、非力な日本人向けにブレードの下面のシャフト付け根付近が曲線的に少しカットされて面積が小さくなっている。欧米の一流クルーはこのオールをカットせずに大きい面積のまま使っている。
  6. ブレードの留意事項:対称型ブレードでは何も考えずに計測できたブレードピッチであるが、非対称型オールになってからは、メーカーやブレード形状に応じて、それぞれブレードピッチの計測要領が異なるので注意を要する。ブレード銘柄毎の計測要領は各オールメーカーのHPに記載されているので、これを参照する。若しくは、日ボで発行しているコーチング用テキストブック「Rowing For All」に日本語で記載されている。

最近のオール:

最近のオールは、ハンドル部分がネジで固定されていて、5cm〜10cm程度長さを調整できる様になっているものが多い。特にSweepオールのハンドルは通常木製であるが、最近のアジャスタブルハンドルのオールは木製ではなく、スカルの様にラバーグリップが付いているものがある。詳しくは以前書いたオールグリップの交換要領に関するログを参照されたい。C2社のラバーグリップは漕手によって、好き嫌いがある様だが、Croker社のラバーグリップは万人受けする模様。
以上